続「道をひらく」松下幸之助 ㉚
● いそげ
いそげ。とにかくいそげ。
日本はいまいそがねばならぬ。激動する世界を考え、これからの日本
を考え、自分のまわりの行く末を真実考えたなら、とにかくもいそが
ねばならぬ。あわててはいけないけれど、のんびりはしていられない
のである。
新芽がふくらむ。一日一日とふくらむ。そしてそれが小さな若葉にほ
ぐれたかと思うと、たちまちピカピカと光り輝くような青葉になって
ゆらいでいる。
アッとおどろくような自然の素早さである。一刻の休みもなく変化で
ある。活動である。成長である。その青葉には、大地の底からのほと
ばしるような力があふれ、薫風と陽光に息づく大自然のいのちが刻刻
にあふれている。
いそげ。とにかくいそげ。ふつふつとあふれるような思いに立って、
若人によびかけ、隣人によびかけ、異国の人にもよびかけて、素直に
肩を寄せ合い、素直に手をつなぎ合い、閉ざされた心をひらき合っ
て、いのちといのちがひびき合うような力を生み出そう。
青葉のこのときにこそ。
● 薫風(くんぷう)
初夏、新緑の間を吹いてくる快い風。
《季 夏》「―やいと大いなる岩一つ/万太郎」
この続きは、次回に。