続「道をひらく」松下幸之助 ㊿+22
● 脚下照顧(きゃっかしようこ)
禅寺に行くと、その玄関に「脚下照顧」と書いたところがある。
脚もとを見よ、履物をキチンとそろえよ、という意味であろうが、
見る人が見れば、履物の脱ぎ方によって、その人の人柄や心がけが
わかるものらしい。
ある剣の達人は、人の履物の減り具合で、その人物を見抜いたという。
いかに腕が立っても、その人の履物が歪んだ減り方をしていたならば、
これは心が定まっていない証左で、その人の剣は、これを邪剣とした。
すなわち正しい剣は、脚下照顧から生まれるのである。
世の中が不況になると、人びとは何となく不安になる。暗くなる。
焦り出す。そして、アテもなしにむやみと腕もふりまわしたくなって
くる。そこで無益な競争が始まって、みんなが疲れてしまう。
これはまさに邪険である。
名剣は人を生かし、邪剣は人も我も傷つける。
脚下照顧、まず脚もとを整えよ。
この際、家をキチンとし、周囲を整え、姿を正し、心を定めて、お互い
の繁栄のために、我、何をなすべきかを、静かに考えてみたいもので
ある。
■ 脚下照顧
道元和尚の「脚下照顧」という漢字の意味は、 「足下を照らし、顧
みよ」ということです。 つまり、他に対して理屈を言う前に自分 の
足もとをよく見て、自己を反省しなさいという意味です。
■ 証左
■ 邪剣
魔剣の亜種。 特に呪いや邪念が染みついた、人心を狂わせる邪悪な
剣のこと。
この続きは、次回に。