お問い合せ

書籍「Effectuation エフェクチュエーション」 ㉝

自らを取り巻く2メートルの世界を変える

 

結局のところ、世界のなかで、自らの行動を通じて好ましい影響を与えられる範囲は

存在していたとしてもごく一部にすぎず、コントロールの及ばないより大きな範囲が

存在していることを私たちは当たり前のこととして受け入れています。しかし、自分

ひとりの力で影響を及ぼすことのできる範囲が限定的であることを十分に理解した

うえでなお、熟達した起業家は、世界に対して無力感を感じたり、能動性を失ったり

することはないように思われます。それは、エフェクチュエーションの論理に体現

された、環境に対して自らの行動を通じて影響を及ぼすための具体的なプロセスを、

彼らが知っているからだと考えられます。

実際に、コントロール可能性に集中することで結果に帰結させる、という「飛行機の

パイロットの原則」は、他のエフェクチュエーションの4つの原則を組み合わせること

で実行されます。

まず起業家は、「何がコントロール可能で、何が不可能か?」を考えたうえで、コント

ロール可能な要素に集中して、新しい行動を生み出そうとします。「手中の鳥の原則」

と「許容可能な損失の原則」は、いずれもこうした発想に基づいていることがわかるの

でしょう。自らがすでに獲得している手段に基づく行動は、未入手の資源を前提とする

計画よりもコントロール可能性が高いため、手持ちの手段に基づいて「何ができるか」

を発想するというのが、「手中の鳥の原則」でした。また、将来どのようなリターンが

得られるかよりも、現時点での自分がどのような損失を覚悟できるかのほうが、やはり

コントロール可能性が高いため、後者を基準に行動へのコミッメントを行うのが、

「許容可能な損失の原則」でした。

こうしたコントロール可能な範囲で新たな行動を生み出すと、それは起業家が直接・

間接に相互作用を行う人々、たとえば周囲2メートルにいるような局所的な他者に対し

て影響を与えることでしょう。そして、そうした他者から得られた新たな反応によって、

起業家自身の環境へのコントロール可能性は高まっていくことになります。こうした

行動の結果に対するフィールドバックを含めて、さまざまな外部環境の要素を取り込ん

でいく思考様式が「クレイジーキルトの原則」と「レモネードの原則」だと捉えること

ができます。

「クレイジーキルトの原則」によって、相互作用をした相手から自発的なコミットメン

トを獲得できれば、起業家の手持ちの手段と「何ができるか」は拡張し、環境に対する

より大きなコントロール可能性を手にすることができるでしょう。

また、結果として予期せぬ事態が起こった場合でも、「レモネードの原則」によって

偶然を機会として活用して新たな行動を生み出すことで、もともとの計画に固執する

場合よりも、状況に対するコントロール可能性を高めることができるでしょう。

このようにエフェクチュエーションのサイクルは、5つの思考様式の実行を通じて環境

 

に対するコントロール可能性を徐々に高め、その結果として取り組み全体の実効性を

高めていくプロセスなのです。


 

この続きは、次回に。

 

2026年1月6日

株式会社シニアイノベーション

代表取締役 齊藤 弘美

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