書籍「Effectuation エフェクチュエーション」 ㊷-1
おわりに
本書のタイトルにも、『エフェクチュエーション 優れた起業家が実践する5つの原則』
とあるように、エフェクチュエーションが熟達した起業家たちから発見された原則だと
いうことは、皆さんすでにご承知の通りです。
では、このエフェクチュエーションは、起業家だけのものでしょうか。
そうは思えません。なぜなら、吉田満梨さんと行った関西学院大学、京都大学経営管理
大学院の授業でもわかってきたことですが、暮らしや仕事のなかで、多くの人が意図
せずに、エフェクチュエーションの「5つの原則」を使っているのを見ることができる
からです。
そういった人たちが、改めてエフェクチュエーションへの理解を深めると、より自由に、
元気よく新しい行動を起こすことができるようになります。コーゼーションのみに縛ら
れた思考から解放され、自分や他人の行動をエフェクチュエーションとコーゼーション
の2つのモデルで、冷静にメタ認知できるようになるからでしょう。
こうした経験から、私がエフェクチュエーションの活用で大きな可能性を感じているのは、
子どもと接する機会の多い人です。なぜなら、大人からみると、子どもはわかりやすい
目的で行動していない、つまりコーゼーションが通用しにくい存在だからです。
具体的には、お子さんをお持ちの方や学校の先生がエフェクチュエーションの視点を
手に入れたとき、子どもの行動への見方が大きく変わる可能性があります。
たとえば、4〜5歳くらいの幼児後期に入った子どもは、友達からおもちゃを無理やり
取り上げることがあります。このとき、すぐに子どもを「ダメでしょ」と叱るのは、
親や教師にとっては、おもちゃを取るのをやめさせることを目的としたコーゼーション
的アプローチといえます。これは、必ずしも悪いことではありません。なぜなら、問題
は手短に解決されるかです。
しかし、もし親や先生がエフェクチュエーションという概念を知っており、活用しよう
とするなら、子どもの行為を一定の割合で肯定することができると考えます。
たとえば、おもちゃを取られた友だちが泣くという経験は、子どもにとって想定外の
「レモネード」となり、友達を悲しませたくないという気持ちや、仲直りしたいという
欲求といった新たな「手中の鳥」が芽生えるかもしれません。親や教師としては、そう
いった可能性を「許容可能な損失」の範囲内で俯瞰的に考えることができるはずです。
この続きは、次回に。
2026年2月22日
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美

