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「新訳」 イノベーションと起業家精神 上 ⑥

[第2章]  イノベーションのための七つの機会

1 イノベーションとは何か

  起業家はイノベーションを行う。イノベーションは起業家に特有の道具である。

  イノベーションは、富を創造する能力を資源に与える。

  それどころか、イノベーションが資源を創造するといってよい。

・資源の創造

  人間が利用する方法を見つけ、経済的な価値を与えないかぎり、何ものも資源とは

    なりえない。社会や経済の領域でも同じことが起こる。

   経済においては、購買力にまさる資源はない。

   購買力もまた、起業家のイノベーションによって創造される。

・富の創出能力の増大

   既存の資源から得られる富の創出能力を増大させるのも、すべてイノベーションである。

・社会的イノベーション

  イノベーションは技術に限ったものではない。モノである必要さえない。

  それどころか、社会に与える影響力において、新聞や保険をはじめとする社会的イノベー

      ションに匹敵するイノベーションはない。まさに、イノベーションとは、技術というよりも、

       経済や社会にかかわる用語である。

   イノベーションは、J.B.セイが起業家精神を資源の生産力を変えることと規定したのと同じように

   定義することができる。あるいは、近代経済学者がしばしばいうように、供給にかかわる概念よりも

   需要にかかわる概念、消費者が資源から得られる価値や満足を変えることと定義することができる。

・需要側か供給側か

・イノベーションの体系

  われわれまだ、イノベーションの理論を構築していない。しかし、イノベーションの機会をいつ、

      どこで、いかに体系的に探すべきか、さらには、成功の確率と失敗のリスクをいかに判断する

      べきかについては十分知っている。まだ、輪郭だけではあるが、イノベーションの方法を発展させる

      うえで必要な知識も十分に得ている。

  今日イノベーションと称しているものの多くは、単なる科学技術上の偉業にすぎない。これに対し、

  マクドナルドのような、科学技術的には何ら特筆するところのないイノベーションが、高収益の

      大事業に発展する。企業以外の事業、すなわち社会的機関のイノベーションについても同じことが

       いえる。起業家として成功する者は、その目的が金であれ、力であれ、あるいは好奇心であれ、

       名声であれ、価値を創造し、社会に貢献する。しかも、その目指すものは大きい。

       すでに存在するものの修正や改善では満足しない。彼らは、新しい価値や満足を創造し、

       単なる素材を資源に変える。あるいは、新しいビジョンのもとに既存の資源を組み合わせる。

 

この続きは、次回に。

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