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チェンジ・リーダーの条件③

2章     社会的機能及び一般教養としてのマネジメント

 

□   成功がもたらした問題

今日、マネジメントの地位にある者のほとんどは、マネジメントのもたらした途方もない影響を理解していない。自分たちがマネジメントをしていること、あるいは間違ってマネジメントをしていることを認識していない。その結果、今日の社会が直面している諸々の問題に対処できずにいる。

確かにマネジメントの役割は変わっていない。それは、共通の目標、共通の価値観、適切な組織、訓練と研磨によって、人々が共同で成果をあげられるようにすることである。ところが今日、まさにマネジメントの役割の意味そのものが、急激に変化しつつある。その主たる原因は、マネジメントの成功によって、労働力の重心が肉体労働者から知識労働者に変わってしまったことにある。

 

□   知識を生産資源に変える

高度の知識と技能をもつ膨大な数の人たちが生産的な活動に従事している。

そのようなことが可能になったのも、マネジメントのおかげである。

かつてそのような社会は一度もなかった。異なる技能と知識をもつ人たちの共同作業によって共通の目的を達成させる方法など知られていなかった。

 

○   教育訓練がもたらした大変化

肉体労働にマネジメントを適用することによって可能となった教育訓練の発展である。

教育訓練は戦時の必要に迫られて発展し、戦後の世界経済に大変化をもたらした。

 

○   知識を仕事に適用する

これらマネジメントの革新はすべて、知識を仕事に適用することから生まれた。すなわち、システムと情報が当て推量や体力や汗の代わりとなった。

マネジメントは、多様な知識と技能をもつ人たちが共同して働く事業すべてのためのものである。NPOのマネジメントには、企業にはない仕事としてボランティアのマネジメントや寄付の募金などがある。しかし、他の仕事は、企業とはほとんど同じである。

目標と戦略を明らかにし、自らが提供するサービスをマーケティングし、成果を評価し、人を育てなければならない。

こうしてマネジメントは、世界的に、一つの新しい社会的機能となった。

 

○   マネジメントと起業家精神はコインの表裏

イノベーションと起業家精神は、新しい事業とともに既存の組織にも適用されるものであり、企業と企業以外の機関、政府を含むあらゆる機関に適用されるものであることが、明らかになっている。

 

○   マネジメントが直面する問題

○   マネジメントとは何か

第一に、マネジメントとは、人間に関わることである。

第二に、マネジメントは、人と人との関係に関わるものであり、したがってそれぞれの国、それぞれの土地の文化と深い関わりをもつ。

第三に、あらゆる組織が、その成員に対しと目標をもつことを要求する。

マネジメントの責務は、これらの目的、価値観、目標についして検討し、決定し、組織の成員に示すことである。

第四に、マネジメントは、組織とその成員を成長させなければならない。

組織はすべて、学習と教育のための機関である。どの階層でも、訓練と啓発の仕組みが確立していなければならない。

第五に、組織は異なる仕事をこなす技能と知識をもつ人たちから成る。したがって、そこには意思の疎通と個人の責任が確立していなければならない。

第六に、組織とそのマネジメントにとって、成果の評価基準は産出量や利益だけではない。

マーケティング、イノベーション、生産性、人材育成、財務状況などのすべてが、組織の成果として、また組織の存続に関する問題として重要である。

第七に、もっとも重要なこととして、組織にとって、成果はつねに外部に存在する。

企業の成果は顧客の満足度であり、病院のそれは患者の治癒であり、学校のそれは生徒が何かを学ぶ10年後にそれを使うことである。

 

○   マネジメントは人間学である。

マネジメントとは、仕事である。その成否は、結果で判定される。すなわち、それは技能である。マネジメントとは、まさに伝統的な意味におけるリベラルアート、すなわち一般教養である。知識、認識、英知、リーダーシップに関わりをもつがゆえに人格に関わるものであり、仕事に関わりをもつがゆえに技能に関わるものである。かくして、マネジメントたる者は心理学、哲学、論理学、経済学、歴史など、人文科学、社会科学、自然科学の広い分野にわたる知識と洞察を身につけなければならない。それらの知識によって、成果をあげ、結果を出さなければならない。

 

 

この続きは、次回に。

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