お問い合せ

危機の時代 ジム・ロジャース ③

・身近で起きる危機の予兆

 

危機が起きる前に身近なところでは、どのような変化が起きるのか。

 

リーマン・ショック前のサブプライムローン問題も非常に興味深いものだった。

2006年〜2007年にかけて、サブプライムローンの問題が短期間で重大な危機に

発展する可能性があると警告する声があった。

多くの人は、その指摘を深刻に受け止めていなかったが、実際には危機は

その後まもなく現実になった。

 

古代ギリシャ神話のトロイ王女で「悲劇の予言者」と知られるカサンドラは、

トロイに迫る悲劇的な運命を見通すことができたと伝えられている。

だが、彼女が「私の予言は当たる。本当なので信じてほしい」と言っても、

誰も相手にしなかった。

「木馬は敵の策略だ。決してトロイの城内に引き入れるべきではない」とも

主張したが、誰も耳を傾けなかった。

人々はカサンドラを笑った。

より多くの人々が笑うことほど、実は正しいことがよくある。

みんなが「この人はおかしい」と言って笑う。

それは歴史上、常に起こってきたことだ。

世界のすべての国は、繰り返される経済問題を抱えている。

歴史的にみて、経済的な問題を抱えたことがない都市、国家、社会はない。

 

・加速する無制限な金融緩和

 

金融危機を受けて、バーナンキは、ゼロ金利政策などの緩和策を実行に移した。

無制限な量的緩和を実施することで危機を切り抜けようとした。

 

世界の多くの国で、金利が限りなくゼロに近い状態になり、日本では

マイナス金利にさえなった。

米国でも金利が非常に低い水準にある。

金利が通常のレベルになると、多くの人にとって大変なことが起きるはずだ。

それでもFRBは「低金利は問題ない。ニャーノーマルだ。心配しないでいい。

大丈夫だ」といった風に主張してきた。だが、歴史はこうした状態が普通では

ないことを証明している。

これまでにないことが起きているのだ。

歴史上、世界でマイナスの金利はなかった。米国でもどこでもこれほど金利が

低い時代はなかった。

だから数千年後の世界が変わるように、何かが変わったら、私は完全に

間違っており、FRBは正しいことになる。

しかし金利は最終的には通常の水準に戻ると私は確信している。

すでに巨額の負債が存在する。そして、借金が増えれば増えるほど、金利に

対する圧力は大きくなる。

今、中央銀行は大量のお金を印刷している。

日本銀行も毎日せっせとお金を印刷している。

 

・債権やETFを買いまくる中央銀行

 

日本銀行は、債券や上場投資信託(ETF)を積極的に購入している。

それは証券会社にとっては素晴らしいことだ。

株式や債券の投資家にとっても最高だろう。たが、それは日本にとって

本当にいいことなのか?

そんなわけがない。間違いなく日本にとって災害だ。

 

2008年、米中央銀行のFRBのバランスシートは9000億ドル(約100兆円)だった。

しかし今では5兆ドル(約550兆円)にまで膨れあがっている。

実に5倍以上に拡大している。

それはいつかストップしなければならない。

紙の原料になる木が枯渇する日が来ないとは言い切れないと思うほどだ。

中央銀行がこのままの勢いで紙幣の印刷を続けると、いずれ木はなくなって

しまうだろう。

 

・どんどん大きくなる借金のスノーボール

 

借金のスノーボール(雪玉)がどんどん大きくなっている。

だからこそ今回の危機の影響は、リーマン・ショックよりも大きくなる。

借金がどこでも非常に多くなっていると、危機が起きた際のショックはより

大きくなる。

 

・貿易戦争に勝った国はない

 

さらに米中などの貿易戦争も世界経済に暗い影を投げかけている。

一時的に緊張は緩和されているように見えるが、今後、再燃する火種があると

私は考えている。

 

歴史を振り返ると、貿易戦争に勝った国はない。

貿易戦争は常にすべての人々に災害をもたらしてきた。

 

私が住んでいるシンガポールでは2019年の時点で経済減速が始まっていた。

米中貿易戦争や関税引き上げなどの影響で、シンガポール経済は減速し

始めていた。

貿易が経済の大部分を占めている韓国にも大きな影響があり、同時点ですでに

景気が悪化していた。

韓国は日本との対立もあったが、それ以外にも以前から多くの問題を抱えていた。

貿易戦争は多くの国の経済を減速させており、そこにインドの金融システムに

象徴されるような問題が追い打ちをかけて、状況をより悪くしている。

 

 

この続きは、次回に。

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