お問い合せ

危機の時代 ジム・ロジャーズ ㉟

・ソフトとハードの両輪がそろう場所

 

深圳は、他の地域が得意とするソフトウェアだけでなく、ハードウェアを

得意としており、イノベーションの両輪がそろっていると私は考えている。

中国は多数のエンジニアを育てており、インドも数多くのエンジニアを

生み出している。

もし私が中国と米国のどちらに賭けるのかを聞かれたら、エンジニアリングの

将来という意味では、中国にかけるだろう。

中国の通信機器大手のファーウェイを見てほしい。

ファーウェイは米国に恐れられている。だから、米国は「ファーウェイの

製品には、セキュリティーのリスクがある」と糾弾している。

米国の企業は、通信技術でファーウェイに追いつくことができないことの

証左だろう。スマートフォンに強い米アップルでさえも、何をすべきか

分かっていない。

だから米国の政府は、中国の通信機器には邪悪にセキュリティー問題があると

非難しているのだ。しかも米国の要請を受けたカナダ政府が、ファーウェイ

創業者の娘で同社の副会長兼CFOだった経営幹部を逮捕している。

ファーウェイが、米国による制裁を回避してイランに同社製品を輸出するため、

米金融機関に虚偽の説明をしたという理由だが、実態としては、この分野で

遅れていることに米国が強い危機感を持っているからだろう。

 

・欧米のメディアの見方が正しいとは限らない

 

もちろん欧米から見た中国のイメージが悪いという指摘に私は同意する。

グローバルに力を持っているメディアは、英国営放送のBBCや米放送局の

CNNのような西側の組織や企業だからだ。

米ニューズウィーク誌のようなメディアで描かれる中国のイメージは、

人々を抑圧する統制的な社会だ。

欧米のメディアは、「中国は人々の生活を監視するために多くのカメラを

設置している」といった記事を好んで掲載している。

しかし今は米国政府も中国政府と同じようなことをしている。

中国は管理された社会で共産主義の悪いイメージの典型の国のように

扱われている。ハリウッドで見られる昔ながらのスパイ映画のような

世界と言えるだろう。

西側のテレビや新聞、雑誌を見ていると、どうしてもバイアスがかかる。

しかし、あなたが今コンゴに住んでいるなら、同じようなことを言わない

だろう。異なる視点になるからだ。

世界を知りたいなら、異なる見方に耳を傾けた方がいい。

あなたは西側の人間なので、欧米の新聞を読む。

私は日本が何であるかを知っているが、西側のメンバーだ。

西側のメディアの見方は世界のすべてではない。

中国は確かに「やせ馬にむち」という言葉のように、弱いものに厳しい

ところがあるのだろう。

 

痩せ馬に鞭

【読み】

やせうまにむち

【意味】

痩せ馬に鞭とは、弱い者にさらに打撃を与えることのたとえ。また、非常に痛々しいさま。

 

私は西側の新聞を読むだけではなく、すでに述べたように5カ国の新聞を

読んでいる。そうすることで、あなたは世界の異なる見方を理解できるように

なるだろう。確かに、中国は西側のメディアに良いイメージを持たれていない。

ファーウェイ製品には世界にとって深刻なセキュリティーリスクがあると

言われている。それでもあなたがアフリカに行き、「このニュースを見て

ください」と言っても、現地の人々は中国が悪であることを知らないだろう。

中国が毎日、弱い者を叩いていることを、アフリカの人々はきっと分かって

いない。

 

・〝邪悪な国〟の情報発信から学べること

 

もちろん中国は、西側における彼らのイメージが悪いことを理解しており、

それを改善しようとしている。中国は、西側のメディアは巨大な一枚岩で

BBS、CNNだけでなく、 NHK仲間だと思っているかもしれない。

私はCNNのテレビ放送を決して見ない。確かにCNNは多くの特派員を

世界各地に派遣しているが、ほかに知るべき情報がたくさんあるからだ。

むしろ中国語の英語版放送ネットワークである「CGTN(中国国際電視台)」を

見るべきだ。ロシア語の英語ネットワークである「RT (ロシア・トゥディ)」も

視聴する価値がある。

 

私はいくつかラジオを聴いており、BBCは常に流している。しかし、BBCで

さえも、今では米国務省の一部のように感じられる。

彼らは常に米国のプロパガンダを流している。

「邪悪な中国政府にさまざまなものを奪われた人々がいる」といった感じだ。

あなたは西側のメディアの報道ばかりを目にしているかもしれないが、

RTを見ると、はるかにバランスの取れた世界観を持つことができる。

RTはロシアの国営放送だが、西側のメディアとは別の視点を与えてくれる。

世界について学びたいなら、より多様な報道を見た方がいい。

あらゆるメディアは自分たちこそ正しいと信じている。

現実を理解するためには、それら全てを吟味する必要がある。

 

 

この続きは、次回に。

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