お問い合せ

危機の時代 ジム・ロジャーズ ㊲

・民主主義と経済の成功はほとんど関係ない

 

再び中国は昇ろうとしているが、中国が突然崩壊し、問題を抱えるという人は

大勢いる。20世紀に米国は世界で最も成功した国になったが、多くの不況があり、

人権は制限され、法の支配が行き届いていたかどうかははなはだ疑問だ。

もちろん米国は多くの点で大成功を収めており、中国に問題があるのは事実だ。

それでも米国人の中国の見方はあまりに一面的と言えるだろう。

「中国には民主主義がない。独裁的な政治システムは成功しないだろう」。

そういった主張をする米国の知識人は多い。そうであるなら、民主主義の国は、

常に豊かになるだろう。しかし歴史を見るならば、多くの民主主義国家は

成功していない。すでに述べたように経済的に非常に成功した多くの国は、

実質的な一党独裁だった。

日本も戦後のほとんどの期間を通じて、自由民主党という1つの政党が政権を

握って支配してきた。事実上の一党独裁国家として、成長を遂げた。

 

古代ギリシャの哲学者プラトンは『国家』という本において、こう述べている。

「国家体制は、独裁から、寡頭政治、民主政治、カオス状態に移行し、

そして独裁に戻る」。

 

私が最初に中国に行ったとき、一種類の新聞と1つのテレビ放送局があり、

みんなが同じ服を着て、考え方もほぼ同じだと感じた。

しかし35年後の今は、インターネットがあり、何百ものメディアがある。

中国では何かに怒っている人々が、地方を中心に毎年数千のデモを起こして

いる。つまり、歴史は社会が進化することを示している。そして日本は、

事実上、1つの政党が支配する国家として大成功を収めた。

日本人はそう言われるのが、実質的には一党独裁の状態にある。

民主主義だからといって、自分の国が成功するわけではないのは、ポルトガルを

見ると明らかだ。経済的には成功していない。スペインも民主主義だが、

成功しているとは言えない。多くの民主主義の国は経済的に成功していない。

つまり民主主義であることは、経済成長とほとんど関係がない。

歴史的に、民主主義であるか独裁であるかは、経済にそれほど大きな違いを

生み出していない。

 

・ネズミを捕まえるネコはいいネコだ

 

中国の最高指導者で改革の功労者だった鄧小平はかつてこう言った。

 

「黒いネコでも白いネコでも、ネズミを捕まえてくるのはいいネコだ」。

彼は正しい。もちろん、多くの人は、自分の国が言論の自由と報道の自由を持ち、

民主主義の社会であってほしいと思っている。しかし、それは民主主義であれば

経済的に成功するということを意味するわけではない。

過去50年間、台湾は経済的に非常に成功した地域だった。だが、成長の道筋を

付けたのは台湾を長期間にわたり支配した独裁政権だった。

韓国も米国の支援を受けた恐ろしい独裁体制の下で経済成長の土台を築いた。

これら事実上の一党独裁の国家は、いずれも経済的に非常に成功している。

民主主義の国だったら、おそらく成功していなかっただろう。

 

シンガポールのリー・クアンユーはかつてこう言った。

「私は目を覚ますと毎日こう思う。国が望むことではなく、国にとって

良いことをしなければならない」。彼はシンガポールの繁栄のために自らを

捧げた。もちろん国家としての中国は、他の国の人々から尊敬されていない。

多くの人々が、米国は民主主義の国であり、自由で世界の平和に役立っていると

考えており、中国は少なくとも最近は他国を武力で侵略していない。

中国は歴史上、国際的な戦争をあまり起こしていない。

これに対して、米国は頻繁に戦争を起こしている。過去50年間を見ると、

米国はいつもどこかの国と戦争している状況にある。

米軍を常に海外に駐留させており、多くの人はそれを当たり前のように

受け止めている。だが、中国は違う。

最近、中国はアフリカに大きな影響を及ぼすようになった。中国政府は、

毎年、アフリカの指導者を北京に招待している。

中国はアフリカに多額の投資をして、何をすべきか、あれこれ注文をつけがちだ。

アフリカ諸国の人々はそれが好きではない。

中国人はアフリカ諸国に投資しても、あれこれ言わない場合が多いので、

彼らは中国を支持している。

 

 

この続きは、次回に。

 

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