完訳 7つの習慣-人格の回復-17
第二部 私的成功
第1の習慣 主体的である
パーソナル・ビジョンの原則
意識的に努力すれば必ず人生を高められるという事実ほど、人を勇気づけるものが他にあるのだろうか。——-ヘンリー・デイヴィッド・ソロー
それは人間だけが持つ能力であって、「自覚」というものだ。
自分自身の思考プロセスを考えることのできる能力である。
この能力があるからこそ、人は世代を追うごとに大きく進歩し、世界のあらゆるものを支配するまでになったのだ。
自覚があれば、人は自分の経験だけでなく他者の経験からも学ぶことができる。
そして、習慣を身につけるのも、絶ち切るのも、自覚という能力のなせるわざなのである。
自分の感情や気分や思考を切り離して考えられることが、人間と動物の決定的な違いである。
この自覚によって、人間は自分自身を見つめることができる。
自分をどう見ているか、自分に対する見方、いわば「セルフ・パラダイム」は、人が効果的に生きるための基盤となるパラダイムだが、私たちは自覚によって、このセルフ・パラダイムさえも客観的に考察できる。
セルフ・パラダイムはあなたの態度や行動を左右し、他者に対する見方にも影響を与えている。セルフ・パラダイムは、人の基本的な性質を表す地図となる。
人間だけが持つ自覚という能力を働かせれば、私たちは自分のパラダイムを客観的に見つめ、それらが原則に基づいたパラダイムなのか、それとも自分が置かれた状況や条件づけの結果なのかを判断できるのである。
社会通念の鏡
相手がどういう人間なのかを客観的に述べているのではなく、自分の関心事や人格的な弱さを通して相手を見ている。
自分自身を相手に投影しているのである。
人は状況や条件づけによって決定されると現代社会では考えられている。
条件づけによってどのような人間になるのかが決まるわけではないし、条件づけの影響力に人はまったくなすすべを持たないなどということはありえない。
ところが実際には、三つの社会的な地図—-決定論が広く受け入れられている。
これらの地図を個別に使って、ときには組み合わせて、人間の本質を説明している。
一つ目の地図は、遺伝子的決定論である。
短期のDNAが何世代にもわたって受け継がれているというわけである。
二つ目は心理的決定論である。
育ちや子ども時代の体験があなたの性格や人格をつくっているという理論だ。
三つ目は環境的決定論である。
ここでは、上司のせい、あるいは配偶者、子どものせい、あるいはまた経済情勢、国の政策のせい、となる。
あなたを取り巻く環境の中にいる誰かが、何かが、あなたの今の状態をつくっていることになる。
これらの三つの地図はどれも、刺激/反応理論に基づいている。
パブロフの犬の実験で知られているように、特定の刺激に対して特定の反応を示すように条件づけられているというものだ。しかしこれらの決定論的地図は、現実の場所を正確に、わかりやすく言い表しているだろうか。
これらの鏡は、人間の本質をそのまま映し出しているだろうか。
これらの決定論は、単なる自己達成予言ではないだろうか。
自分自身の中にある原則と一致しているだろうか。
この続きは、次回に。