ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 13
6章 あるべきマネジメント・アクション
今日のビジネスにおける3つの最優先課題
● アクション1 —-長期計画と短期計画のバランスをどうとるか
今こそ心のリエンジニアリング(見直し・入替)やリストラクチャリング(再構築)が肝要であると強調する。
特にマークすべきポイントは3つ。
1つ目は、研究開発、市場調査、セールス・プロモーション、人的資源の開発といった
開発部分への〝投資予算〟を絶対にゆるがせにしてはならないと説いている点である。
2つ目は、利益率から財務計画をスタートさせることはよろしくないという指摘である。
キャッシュ・フローをベースにせよと言っており、これは、低成長が常態化している昨今、
とくに日本のビジネス万にとって肝に銘ずべき点であろう。
そして3つ目は、ビジネスにおいて税制への配慮を第1次的なものにして意思決定を下しては、
道を誤るという点である。
● アクション2—-知的労働者とサービス労働者の生産性をどう高めるか
今後の大問題は、新しく本格的に、しかも加速度的に増大しつつある知的労働者
(ナレッジ・ワーカー)やサービス労働者の効率を、どのようにして高めるかであるという。
このままで放置するならば、先進諸国の経済力アップへの足を大きく
引っ張ることを再度警告する。
ドラッカーの見解としては1つ目に、知識労働とサービス労働を区別して考えること。
2つ目に、これまで以上に、仕事をめぐる使命(ミッション)の明確化とそれへの集中化、
そして課業(タスク)をめぐる本質的なものの再検討と、それに基づく徹底した
見直しと廃業を要求する。
とくに本務への集中化を妨げる阻害要素を全面的に排除することと、
良い意味での創造的手抜きを、生産性向上策として勧めるのである。
しかも3つ目の勘どころとして、生産性の測定においては、数量的・定量的な
基準だけでなく、品質などの質的・定性的な側面にも十分配慮することが
大切だとしている。とくに最近のように、顧客満足が重視される時代においては、
なおさらこの点を無視してはならないと説く。
● アクション3—-未来をどう見極めるか
まず第1にドラッカーは、未来の動きのうち今日すでに発生しているもので、
比較的確度が高く、持続性があり、矛盾が少ない形で表れそうなもの、
たとえば十八番のデモグラフィックス(人口動態)の推移などに目をつけることを
勧めている。
第2には、すでに現在の中に起きている未来、すなわち、その展開がまだ十分完全な
形では現われていないトレンドなどに目をつけて、その解析を徹底して行うことを
提言する。
第3のヒントは、ポジションや比率からの発想の展開である。
たとえば全流通システムの中で一定の技術や商品やサービスやシステムが
占める位置を、立体的、かつダイナミックに検討することから、未来予測が可能に
なってくるとするのである。すなわち、全産業との連環の中で、事業のポジションを見つめ、
新しいポジショニングを探求することを提言している。
このような方策によって、新しい未開発のビジネス・チャンスをつかむ糸口が
発見できるであろうという。
この続きは、次回に。