ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 23
10章 未来の新組織とリーダーシップ
巨大組織社会は来らず
ドラッカーが指摘するのは、大組織中心の従業員社会という時代が1960年代中頃で止まって
しまったことである。
1960年代から世界的傾向として先進国で見られた「ビッグ・オーガニゼーションを中心とする
エンプロイー・ソサイエティ(従業員社会)は崩壊しつつある。
世界経済はそれ以後の30年間、生産も売上も3倍になったが、当時の大企業は、
逆に市場シェアを失ってしまっているし、成長もほとんど止まっている。
伸びたのはM&Aによるものがすべてだといえるくらいである。
また、過去10年間、アメリカの工業製品は、ほぼ2倍に伸びたが、その80~90%は
中小企業によるものであり、「規模の経済」は「規模の不経済」に道を譲ってしまっている。
グローバル化は企業規模を問わない
ドラッカーが組織の歴史を振り返りつつ指摘する第2の点は、グローバル化の進展である。
最近は企業規模のいかんを問わず、いずれの企業も「国境を越えてトランスナショナル化」することを
余儀なくされてきており、その戦略もグローバルな展望に基づいていなければならない。
「組織の終焉」などとんでもない
第3にドラッカーが焦点を当てるのは、昨今の「組織の終焉」論についてである。
あまりにも曖昧さや混沌がはびこり、あまりにもフレキシビリティ(弾力性)やバリエーション(変化)を
つけることが求められるので、そのためにむしろ、組織の使命、価値観、戦略などのいっそうの
明確化が要求されるというのがドラッカーの見方である。また、長期と短期の目標のバランスを取り、
達成すべき成果の明確化をはかり、さらに、だれが最終的に意思決定を行い、だれが危機のときに
指揮をとるかについては、絶対に明確化しておくことが不可欠だと主張する。
この続きは、次回に。