ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 24
新しい社会性のある組織へ
第4の論点としてドラッカーが提起するのは、組織の定義づけが変化しつつあることを
見極めるべきであるという点である。
組織の目標は市場において業績を達成するとともに、ひとつの社会的な制度として、
人間の強味を十分に発揮させ、その弱味を可能な限り減殺するものでなければならないからである。
そして最後にドラッカーが提示する、今後の組織論のあり方は、唯一絶対の組織構造の追求ではなくて、
理想的な組織として多くの異なったあり方を認めるものであることを付け加えておきたい。
リーダーのタイプは千差万別
過去50年以上、大小のあらゆる種類の組織を見、かかわり、研究してきた結果、
結論として言える第1の点は、「生まれながらのリーダーというものは、実際にいるとしても
ほんのわずかなので、そういった人々にのみ頼ることは不可能である」ということだ。
すなわち、リーダーシップは学ばなければならないものであり、また学べるものだということである。
第2の教訓は、「リーダー的性格」とか「リーダーシップ・スタイル」とか
「リーダーとしての資質」などというものは存在しないことである。
オフィスに閉じこもる人、人付き合いのよい人。温和で寛容なタイプと、その反対の厳しいウルサ型。
衝動的で行動の早い人と、その逆の丹念に吟味して決定するタイプ。
一見温かい人とその反対の冷たい人など、まったく千差万別である。
たった一つだけ、リーダーに共通した「性格的資質」があるとするならば、それは、
「カリスマ性」などはまったくないことと、そういったものには訴えていないことであると説く。
有能なリーダーに共通の行動とは
有能で効果性の高いリーダーは、次の4つの簡単なことがらを熟知してる点が共通している、
とドラッカーは指摘する。
1 「リーダー」の唯一の定義は「フォロワー」(従う人)がいる人、ということである。
リーダーには考える人もあれば予言する人もある。
その両方の役割はともに重要だが、従うひとがいなければリーダーは成り立たない。
2 効率の高いリーダーは、愛されたり、尊敬されたりする人ではない。
そのフォロワーに正しいことをさせる人である。人気取りなどはリーダーシップではなく、
結果を生むことこそがリーダーシップの要諦なのである。
3 リーダーは他人からよく見える(ビジブル)存在である。
したがって、自らがロール・モデルとなって模範例を示すことが関心である。
その性格、能力、流儀、関心事項などについて炉減ともいえるほどの多様性をリーダーは持っているが、
有能なリーダーは、その「行動のしかた」が、次の6つの点に関して似ている、
とドラッカーは言う。
1 「自分は何をしたいか」という問いから始めるのではなく、
「どんなニーズを満たすべきか」という問いから始める。
2 次に、「違いを生み出すためには自分には何ができ、
何をすべきか」を問う。
これはニーズとリーダーの強味と、自分が最も効果性を発揮できるところの適合を
考えるからである。
3 そして絶えず、「この組織の使命と目標は何か。
業績と結果を構成するものは何か」を問いただす。
4 しかも人間の多様性への許容度は非常に高く、自らのコピー人間などは決 して望まない。
また、「この人間が好きか、嫌いか」などは考えないが、個人の業績、
判断、価値観に対しては手厳しい。
5 働く仲間の強味を恐れることなく、それを大いに讃える。
そのモットーは、かの鉄鋼王アンドリュー・カーネギーの「ここに自分自身よりも
優れしものを惹きつけし男、眠る」の墓碑銘を実践するものである。
6 毎朝「鏡(ミラー)のテスト」に自らをさらし、今日の自分は、自分がなりたいと考えた人間かどうか、
尊敬しうる人物かどうかを見直す。そして、リーダーが陥りやすい誘惑である。
正しいことよりも人気取りになることをしていないかどうか、自らを戒める。
〝口動人〟ではなくて真の〝行動人〟たれ
最後に、効果性の高いリーダーは口先だけのリップ・サービス人間ではなくて、
「行動人」であることをドラッカーは強調する。
ということは、後方陣地であれこれと指示命令を下す人ではなくて、自ら最前線に
出かけていく人であり、現場へ出る人だという意味である。
また、権限委譲をどしどしする人でもある。
さもないと些事に足をとられることをよく承知しているからである。
しかし、ひとつだけ委任しないことがある。
それは、自分の方がダントツにうまくでき、違いがわかり、基準を評定でき、
この点は皆にもよく覚えておいてほしいと思うことは、他人に任せないで
自分でやるべきなのである。
この続きは、次回に。