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ドラッカーとの対話  未来を読みきる力 25

11章  変貌する小売業、サービス業

 

小売業の本質は4つのドリブンから

 

生産性の向上に関しては、製造業における効率向上の原点であったテイラーらの科学的管理法を挙げ、

その課業(タスク)の研究と見直しから、我々はまだ多くのことを学びとれるとドラッカーは言う。

そして、これらの課業を適切に処理させるには、仕事の使命と目標を認識させ基本訓練を施すことと、

的確なリウォード(報酬)体系の整備、そしてパートナーシップ的基盤に基づく

チームワークがその骨子となるとしている。

そこで大切なことは、それぞれの課業において、「ZD(ゼロ・ディフェクト)=無欠点=ノー・ポカ

=完璧」であることが、真のカスタマー・サービスやカスタマー・サティスファクション

(顧客満足)へのカギであるという点だ。

だからそうしたひとつひとつが、実は揺るがせにできないことをドラッカーは説くのである。

 

いかにして上手に手抜きをするか

 

サービス労働における科学的管理法からの再学習を説く第2の理由は、いかにして上手に

手抜きをするか発見するためである。

ドラッカーは、とにかく何をカットし、何を捨て、何を放棄するかを見極めることこそ

生産性アップの重要な勘どころであると説くのである。

 

デパート衰退の原因は

 

まず、「ノン・カスタマー(非顧客)」の無視・軽視。

ここでのドラッカーのいう「ノン・カスタマー」とは、今自分たちが相手にしていない

潜在的顧客のことを指す。

 

トップも現場に立て

 

トップが現場に出ず、現場感覚を失ってしまったことにも、デパート衰退の一因がある、

とドラッカーは言う。

かねてからドラッカーが主張している「組織内にあるものはコストばかり。

真の市場機会と利益のチャンスは外にあり」という考え方に連なるものである。

またこれはオフィス内に留まらず外に出る、セールス現場に赴く、顧客とじかに触れる、

表の風に吹かれることの重要さを指摘する発想でもある。

 

12章 製造業の回復と復権へ

 

10分先と10年先を同時に考えよ

 

それではドラッカーは、日・米・欧の製造業とモノづくり文化をどう見ているのだろうか。

〝マニュファクチャリング〟というテーマに収斂してみると、どうも次のようなことが

言えそうである。

 

ポイント1

製造業のみにハイライトを当て、これを過剰に重視し、永遠視することは決してしない。

むしろ「すべてを変化の相の下に見よ」というかねての主張に従って、その変貌と変革を

どう実現するかに焦点を当てようとする。

 

ポイント2

世はまさに25年前からドラッカーが説いてきたように、ブルーカラーを中心とした

筋肉労働からホワイトカラー、ゴールデンカラーを中軸とする知識労働の時代に

どんどん推移しつつある。

したがって製造業も、知識ワーカーをどう生かし、育て、管理するかに、人材育成の照準を

定めるべきである。

 

ポイント3

製造業の経営組織の運営に際しても「技術先行という観点に溺れることなく、

市場と顧客形成を第一義的に考えて行わないと、経営の舵取りを誤る」という。

 

ポイント4

モノづくりとはいえ製造業でのマネジメントも、物的・知的・金銭的・時間的といった企業内外の

様々な資源を効果的に組み合わせ、「10年先と10分先の両方を総合して勘案しつつ行うべきだ」。

これは、かつてソニーの故盛田昭夫会長とテレビ討論をした際の発言である。

 

ポイント5

アメリカの大半の製造業が困難に陥ったのは、〝イノベーション〟、

つまり革新の問題に対して適切に対処しえていないからである。

ここでのイノベーションというのは、単なる技術革新だけではなく、経営システム、

市場システム、人事システムなどを含めた広義の「新機軸の打ち出し」を指す。

 

ポイント6

19世紀末にアメリカのテイラーが提唱した「よりスマートに、より手際よく、より賢く、

より上手に働く」という発想と、その流れを汲む科学的管理法を、一部の人々のように

古臭くて非人間的な機械主義観として放棄しさるのは間違っている。

現代のSQC(統計的品質管理)の発想の下においては、人間関係論のアプローチと融合されて、

〝情報と業績責任を連結しうる〟有力な製造管理の手法となりうる。

同時にサービス業、とくに対人サービスを軸としたサービス労働においては、

科学的管理法は重要なツールとしてますます応用できるであろう。

 

この続きは、次回に。

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