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ドラッカーとの対話  未来を読みきる力 26

製造業再構築へのドラッカーの新提唱

 

かくしてドラッカーは、大手製造業の苦悩は「人間とて機械、時間と金銭、標準化と弾力化、

機能と制度(構造)との相克」に集約することができるという。

それを解決して製造業における生産性=業績を向上させるためには、

 

(1)   SQC(統計的品質管理)の再展開

(2)   新製造会計方式の導入

(3)   モジュール型の〝船団方式〟製造工程の実施

(4)   システムズ・アプローチの組み込み      という4つの軸を据え、

 

相乗効果が発揮できるようにそれぞれを行え、と提言するのである。

 

13章 ノベーションの追求と戦略の実現

 

イノベーションと企業家精神、そして戦略について、ドラッカーの築き上げた「世界」を

探索してみることにしよう。

まず、イノベーションの場、革新への機会とは、いったいどこにあるのか。

また、ドラッカーが「7つの窓」という言葉でまとめたイノベーションの7つの源泉とは何なのか。

これらを手はじめにして眺望していこう。

 

革新の7つの窓

 

1 予期せざる成功・失敗・変化の存在

 

人間というのはどうも現状維持が好きな存在であり、現状のパターンや習癖から脱け出しにくい。

そのため期待に反すること—–たとえばそれが良いことであれ、まずいことであれ—-や、

驚きを好まぬ性向がある、とドラッカーは指摘する。

これこそが、せっかく前月の業務月報に思いがけない売上増進があっても、それを追求してこそ

チャンスをつかむといったことができない第1の原因だと彼は言っているのである。

さらに、企業の経営者にとって「予期せざること」の到来は自分の判断ミスなのであり、

たとえそれが思いがけない成功であるにせよ、忌避する傾向がある。

これがせっかくのチャンスを逃してしまう第2の理由とされている。

そもそも新製品や新サービスを世に出した際、提供する側が当初狙ったところで

ドンピンシャリと商売が当たる、などということは滅多にあるものではない。

多くのケースを挙げながら、ドラッカーはそう大真面目に論じる。

ケガの功名、ひょうたんからコマ。こうした「思いもかけない成功」から学べ、

とドラッカーは強調するのである。

 

2 調和せざるものの存在

 

かくあるべき姿と乖離した現実、ギャップの存在がある。

これは、数字や報告の形では現われない。つまり、定量的というよりは定性的な形で現われるのだ。

それは、すでに起こった変化や、これから起こりうる変化の徴候といえる。

この第2のイノベーションのルーツも、第1の「予期せざる成功・失敗・変化の存在」との関連で

よく理解できるはずだ。

経済の実態とマッチしない、社会通念と不一致である、消費者の価値観や期待とのズレがある、

プロセスにおいてどうも調和しない—-などの点があったら、そこをよく探り出し、

トコトン追求せよと、ドラッカーは鋭く指摘する。

そこに金鉱があるはずだと。

現実相(reality リアルティ)とのズレ、そこにこそ機会があり、「機会こそ革新の源」であることが

ここでのチーフ・モチーフなのである。

 

3 プロセス上のニーズの存在

これは昔からいう「必要な発明の母」と通い合う見方である。

しかし、ニーズがあればそれでいい、というわけではない。

 

次のような5つの基本的な判断基準に合致することが強調されている。

①  ニーズの発生する場が、1つの完結した場合であること

②      1つだけ弱点や欠落した要の部分があること

③      目的が明確に限定されていること

④      問題解決への具体的手だてが明瞭に定められていること

⑤      何かよりよいやり方があるはずだ、という認識が広まっていること

 

 

この続きは、次回に。

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