ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 28
廃棄することからイノベーションは始まる
以上が、ドラッカーが提言している7つのイノベーションの窓である。
ただこれですべてではない。緊急につけ加えたいことが2つほどある。
まず1つ目は、イノベーションという言葉の意味についてだが、ドラッカーのいうイノベーションは
「技術革新」といった狭い意味に限定されるものでは決してない。
彼のイノベーションの真意は、もちろん技術面も含まれるが、市場、経営のやり方、
制度といった様々な領域において、「新機軸を打ち出すこと」にこそある。
2つ目は、すべてイノベーションは「組織的・系統的廃棄」に端を発するという指摘である。
なにかを調べたら問題が出てきた。このとき、どうするか。
ドラッカーは、その問題を解決するために、さらに調査させるといった愚を厳に戒め、
次のように明言している。
「その際、やるべきことはただひとつ。今までやってきたこと、今やっていることの徹底的な
見直しによる組織的・系統的廃棄である。これ以外に近道はない」
10年やってきたことは必ず見直せ、とドラッカーは以前よく言っていた。
しかし最近では、5年ごとに大きな見直しを、3年ごとに中規模の見直しを、そして1年ごとに
真剣な見直しを、そして1年ごとに真剣な見直しを、と繰り返し指摘しているのである。
ドラッカーは言う。
「多くの企業やその成長戦略が頓挫するのは、〝昨日〟という亡霊にとらわれ、過去の暴威に屈し、
〝昨日の正しいこと〟につかまえられているからだ。
不滅のもの不死身のものは何もない。自己の生み出した排泄物を除去できない組織は、
その洪水のなかで朽ちてします。
だから、昨日の呪縛から離脱するには、昨日のなかから非生産的なもの、陳腐化したもの、
老巧化したものを蛮勇をもって取り去ることである。
リーダーがこれを断固として実行しなければ、組織は死滅への道を辿るのみである」
イノベーション「べし・べからず集」
● べし
① 機会の分析を行うこと。体系的にイノベーションを遂行するためにはこれが必須である。
② 「外に出よ、見よ、尋ねよ、聞け」。人間の全感覚を総動員することが必要である。
③ 「単純であれ」
④ そして、「小より始めよ」
⑤ 最後は「トップを狙え」
● べからず
① 「小賢しく振る舞おうとするな」。さらに言うなら、平均的な人にもよくわかること、
能力の低い人にもできるようにやれ、ということである。
② 「多角化・多様化をいきなりするな」。別な言葉で言うなら「焦点を絞れ」。
③ 「将来のためにイノベーションを行うな」。現在のイノベーションを狙えということ。
さらにドラッカーは、イノベーションに関して次の3つの忠告をしている。
① イノベーションはつらい仕事である。
② 革新家は自分の強味の上におのれを築くこと。
③ イノベーションとは経済や社会に影響を与えるべきものである。
この続きは、次回に。