ドラッカーとの対話 未来を読みきる力 38
● ドラッカーの名言録その19 「最も重要なことから始めよ」
成果を上げるための秘訣を1つだけ挙げるならば、それは集中(コンセントレーション、
フォーカシング)である。成果を上げるエグゼクティブは、最も重要なことから始める。
ドラッカーは〝ながら族〟を嫌い、一度に1つのことだけを行えと言う。
集中が必要なのは、エグゼクティブの職務の本質と、人間の本質によるとする。
集中は、エグゼクティブがあまりに多くに囲まれているからこそ必要なのである。
なぜなら、一度に1つのことを行うことによってのみ、早く、しかも良い仕事が
できるからであるとドラッカーか力説する。
● ドラッカー名言録 その20 「知識は本の中にはない」
知識は本の中にはない。本の中にあるのは情報のみである。
知識とは、それらの情報を仕事や成果に結びつける能力である。
そして知識は、人間、すなわちその頭脳と技能の内にのみ存在するというのが
ドラッカーの主張である。さらにドラッカーは、「知識は事業でもある」とも指摘し、モノやサービスは、
企業がもつ知識と、顧客がもつ購買力がもつ交換の媒体であるにすぎないという。
そして企業は、人間の質いかんによって、つくられも壊されもするものなのである。
労働は、いつの日か完全にオートメーション化されるところまで機械によって
行われるようになるかもしれない。
しかし、「知識はは、優れて人間的な資源である」と知識の重要性をトコトン強調する。
また、人間の能力に関しては、ほかの者と同じ能力をもつだけでは十分ではなく、
そのような能力では、事業の成功に不可欠な、市場におけるリーダーの地位を
手に入れることはできない。そこで、他に抜きんでること、すなわち、卓越性だけが
利益をもちらすと力説する。
さらに純粋の利益は、こうしたエクセレントな力でイノベーションを行う者のみがもたらす。
ドラッカーは、「人間は知覚したいとて思うものを知覚する」という点を指摘する。
つまり、人間の心は印象や刺激を受けると、すでに持っている期待の枠組みの中に
それを当てはめようとする。
すなわち見たいものを見ようとする、いわゆる「自己実現の予言(セルフ・フルフィリング・
プロフェシー)」が作用するのだ。
コミュニケーションを成立させるためには、コミュニケーションの受け手が何を見、
何を聞きたがっているかを理解することが、まず送り手側に必要である。
そうして初めて、受け手の期待を利用できるかどうか、いかなる期待を利用できるかを
知ることができる。ときには、断絶の衝撃、すなわちコミュニケーションの受け手の
期待を木っ端微塵に粉砕する場合もある。
それによって受け手は、期待していないものが起こりつつあることを認めざるを
得なくなるであろう。
このようにドラッカーは知識の形成と破壊について重要なヒントを投げかけている。
この続きは、次回に。