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ドラッカーとの対話  未来を読みきる力 47

インパクトとエグゼクティブ

 

さて第6のキー・ワードは、ドラッカーの社会的責任論をめぐるsocial impactという言葉である。

ここでのインパクトとは、比較的ネガティブなニュアンスの漂う、マイナスという

含みをもった影響力、衝撃力のことである。

ドラッカーはインパクトを、社会そのものから発生するものと、社会制度(institution)から

発生するものとの2つに分け、意図的であろうとなかろうと、自らのインパクトに関しては

責任があめという立場をとるべきだとする。

ここから、さらにインパクト同士の相殺・均衡(trade-off)の問題や社会的責任の限界論などが

展開されてくる。

 

第7にドラッカーが新しく意味を付与した言葉は何か。

それはexecutiveである。単なる経営者、執行責任を持った人間、上級マネージャーといった

従来の内容をぐんと広げて、責任を持って意思決定(decision-making)をする人間という含みを

持たせたのである。

エグゼクティブをmanager(経営管理者)と同義語として、あるいはそれ以上の広い内容を

持つ言葉として定着させたのはドラッカーである。

 

8番目も、ドラッカー風の読み込み、ないし読み替えとして著名な例であるが、それはcontrolと

controlsの区別である。controlsはcontrolの単なる複数ではないとし、controlsは測定・情報と

同義語であり、controlは指示・命令・方向づけと同一視する。

すなわちコントロールズは手段にかかわるものであり、コントロールは目的にかかわるものである。

コントロールズは事実、つまり過去の出来事を扱うのに対して、コントロールは期待、

つまり未来を扱う。また、コントロールズは分析的であり、いかにあるべきかを見ると

いうふうに区別しようとする。

そして、マネージャーが「コントロール」できるようにするためには、「コントロールズ」は、

経済性(economic)、有意義性(meaningful)、適切性(appropriate)、整合性(coordination)、

時宣性(timely)、単純性(simple)、操作可能性(operational)の7つの原則を満たさなければ

いけないとする。成果をあげるためには未来に焦点を集中するドラッカーが、金庫番的管理者の

後ろ向きのコントロールズやそのシステムを極端に嫌っている姿が、ここに如実に映し出されて

いるといえよう。

 

責任・権限・権力—–

responsibility。これは責任と訳されるが、日本的感覚としては、何かまずいことをした時に

制裁行為(sanction)を受けたり、腹を切るといったようなとらえ方をするが、英語一般、

とくにドラッカー的用法としては、むしろ職責、責務、職務内容と訳すほうが妥当である。

「個人あるいは小集団や組織単位が成果をあげることを期待されている遂行(performance)領域」とでも

言おうか。そして、日本では通例「報告・説明責任」と訳されるccountabilityも、「成果、結果への

responsibility(責務)」ととらえるべきであろう。

 

次にauthorityであるが、これは通常は権限と訳されている。しかし、その意味は「与えられた課題や

任務を達成するために、当事者の使用判断に委ねられた資源を用いる権利」ぐらいに考えるべきであり、

むろん、この中には「人間を指示し方向づける権利をも含む」とすべきであろう。

そしてこのオーソリティは、いつも組織の方針や手続や社会全体のルールによって制約されていると

見なすべきであろう。

これに対して、power(パワー)は、よく「権力」と訳されるが、「影響(influence)を与える能力、

あるいは力の保持者が自分の浴する方向に他人を行動させる能力」ぐらいにとらえるのが

適当といえよう。

また、ドラッカーのstrategy(戦略)の用い方は、「組織がその全体的な目標を達成するためにとる

基本的なアプローチ」として読み替えることができよう。

そしてtactics(戦術)は、このあらかじめ決められたストラテジーの達成のために用いられる

基本的アプローチとして定義づけられている。

 

 

この続きは、次回に。

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