知識ゼロからのイノベーション入門⑭
第3章 [グーグル]
ラリー・ペイジの組織型イノベーション
—-要は「アイデア」だ
第1話 発想だけではダメ。発想の製品化がイノベーション。
単に発明をしただけでは何にもならないと思った。
素晴らしいアイデアや発明だけではダメだ。
それを形にし、世に送り出し、人々に使ってもらう。
そして、社会に影響を与える。世の中を変えていくことこそ重要だと考えるようになった。
多くの人は、現状を変えたくても変えられないものだと思っている。
だが、イノベーターは現状を自分の手で変えられると本気で信じている。
変化への道を見つけたいという強烈な意思があり、その実現のために会社をつくり、
手段としてお金も儲ける。
グーグル革命の原点は、こうしたペイジの情念にある。
第1章 1つの着想を考え抜く。いい答えには必ず人が集まる。
・ 発想を異分野に持ち込む
1995年、スタンフォード大学の大学院生だったペイジは「ウェブ全体をダウンロードして、
リンクの記録を取ったらどうだろう」という着想を得た。
研究者は論文を書く際に多くの論文を参照する。
つまり、頻繁に引用される論文は、それだけ関心を持たれ、価値が高い。
引用された回数=論文の価値なのだ。
ペイジは、ネットの世界で貼られたリンクの数にも同じような重要性があると考えた。
リンクは意味もなく貼られるのではない。
情報に価値がある時にリンクが貼られる。つまり、リンクの数からサイトの人気を推測できるし、
ランクづけもできる。
これがペイジの仮説であり、グーグルの中心技術「ページランク」につながっている。
・ 予定外からも変革は始まる。
では、リンク数はどう調べるか。
考え抜いた末に生まれたのが冒頭の着想だった。
ペイジはダウンロードに着手したが、その時点では検索エンジンをつくる気もなければ、
グーグルを創業する予定もなかった。
あくまで論文を仕上げることが目的だった。
だが、その挑戦に魅せられた「数学の天才」サーゲイ・ブリンが加わることで斬新な
検索エンジンが生まれることになった。
従来の検索エンジンは広告主の情報が検索結果の上位になりがちだったが、
2人の方法なら価値の高い情報が上位になれるのだ。
第3話 自分が常識外れではなく、常識が間違っていると考える。
ペイジとブリンが検索の世界でイノベーションを起こせたのは、ユーザー本位を追求したからだ。
2人は、お金を受け取って検索上位に載せるのは低俗だと考えていた。
ヤフーのようなポータルサイトは、ユーザーを長時間とどまらせることが必要だ。
広告を取りやすいからだ。それに対してグーグルは、ユーザーが短時間で検索を終えることが
正しいと考えていた。お金を取らずに、本当に有益な情報を優先して載せる。
検索の質は高いほどいいし、検索速度を遅くするバナー広告など不要だ。
2人は目標をこう表現した。
「世界の情報を整理し、誰もが使えるようにする」
「世界中の情報をワンクリックで届ける」
こうした視点は当時の流れと逆で、受け入れる企業はなかった。
2人はグーグルの立ち上げ前に、ヤフーやアルタビスタ、エキサイトなどの検索会社に
エンジンの売却を試みたが、どれも不調に終わっている。
2人にとって検索はインターネットの最も重要な要素だったが、他の企業にとって検索は
サービスの一部にすぎなかった。
しかし、2人は「僕たちは考え直したほうがいいかもしれない」と思わず、
「世界が間違っている」と考えた。
他社が関心を示さないのなら、自分自身でやる。
こうしたグーグルを創業、ガレージの入口に「グーグル世界本社」と書かれた看板を掲げた。
この続きは、次回に。