知識ゼロからのイノベーション入門-アップル④
第7話 マニュアルをつくるな。問題意識がぶつかり合う場をつくれ。
・ イノベーションは、システムではない
「意識するのは、優れた製品をつくることだ。『革新的になろう。
これがイノベーションの5カ条。掲示しよう』というふうには考えない」。
そして、イノベーションを体系化するのは、格好よくなろうとして、かえって格好悪くなる
人間みたいなものだ、と続けている。
イノベーションは、システムではないのだ。
問題意識をもった社員同士がふと廊下で出くわしたり、夜中にアイデアが浮かんで
電話をし合ったりする中から自然に生まれてくる。
また、イノベーションに必要なのは、アイデアを生む風土と、それを育てる力である。
・ できない理由は聞かなくていい
トップから社員までみんなが問題に関心を持つ。
そしてアイデアを出し合い、議論し合う。出たアイデアは埋もれさせない。
イノベーションは、そんな風土から自然に生まれる。
反対に、アイデアがあっても埋もれさせたり、形にならなかったりすることが続くと、
アイデアの生まれない風土になってしまう。
iMacのアイデアをデザイナーのジョナサン・アイブが思いついた時、技術者たちは
できない理由を38個も並べ立てて反対した。だが、ジョブズは強引に実現を迫った。
それでも反対する人間は、こう説得した。
「CEOの私が、これは可能だと思うからさ」と。
第8話 会社が大きくなると夢は小さくなる。チームは少人数制で。
・ 大企業からの転職者に要注意
ジョブズは、会社の規模が大きくなると、かつて輝いていた企業もIBMのように夢を失い、
製品に対する愛着や情熱を失うと見ていた。
それでは、創造力あふれる人間は力を発揮できない。
できる人は、居心地の悪い会社を去ってしまい、残った普通の人間が平凡な製品を
生むようになると考えていた。
・ 100人以上の事業部をつくるな
ジョブズは「優れた人間だけで小さなチームをいくつもつくって、思い切り夢を
実現させてみたらいい」と言った。
そして、アップルⅡの後継機「リサ」開発チームをつくるが、チームから外されてしまう。
次に率いたのが、マッキントッシュ開発チームだった。
それは、こじんまりとしたチームが効果的だと証明してみせる実証の場でもあった。
ジョブズは「マックを成功させることで、こうした製品中心のチームづくりをアップル全体に
広めたい」と語り、「(大人数の)海軍よりも(少人数の)海賊」という有名なスローガンを掲げた。
ジョブズに、100人以上のチームや事業部を率いる気はなかった。
第9話 安易にイエスを言わない。相手は自分で限界を超えてくれる。
ジョブズの要求は厳しい。
社員が代替案を示しても、「言いたいことはわかった。でも、僕のために頑張って
くれないか」と返すことが多い。
社員は「オーケー」と返事し、限界を超える仕事ができるようになっていく。
社員に本気で期待していないボスは、そこそこの仕事で「オーケー」を出すから、
社員は自分の限界を超えることができない。
限界を超える仕事こそがイノベーションをもたらすのだ。
ジョブズは、細部にこだわる理由を「自分が質を測るものさしになるためだ」と言っている。
「卓越さが求められる場に慣れていない人もいるからだ」と。
ジョブズは「本当にいいもの以外には、常に口を出し続けた」と言う。
それは「御膳立てさえしてやれば、みんな自分で思っていた限界を上回る仕事ができる」からだ。
この続きは、次回に。