知識ゼロからのイノベーション入門-アップル⑤
第10話 間違いに気づいたら完成寸前でもリセットボタンを押す。
・ 正しくやれるチャンスは1回だけ
仕事が完成直前、大間違いに気づいた。どうすればいいか。
ジョブズは、いつも「リセットボタン」を押すことを心がけてきた。
納得のいかないものをさえも「いいもの」であるかのように、自分を偽って世に送り出すと、
その後ずっと後悔をし、普通の製品になる。
本当に納得のいく、絶対の自信作を送り出すことで、その後ずっと誇り、納得感が得られ
イノベーションへつながる。
・ やり直すことをためらうな
iPhoneの開発でもリセットボタンを押している。
発表まで数ヶ月に迫った日、ジョブズは、自分が選んだケースのデザインに実は
満足していないと気づいた。
デザインを変更すれば、9ヶ月の苦労が水の泡になり、回路基板を含め、すべてをつくり直す
必要がある。だが、ジョブズは再び一からやり直す。
その結果、iPhoneは従来の携帯電話を過去の遺物に変えるほどの革命を起こすことになった。
第11話 くつがえすのがイノベーター。あなたは歴史を変えたくないか。
・ 電話を再発明する
2007年、ジョブズはiPhone発表の講演で、こう言った。
「革新的な製品がすべてを変えてしまうことがある。
一生のうちこういった製品の開発に一度でも関われたら幸運なことだ。
アップルは、そうした製品をいくつか送り出せた」
1つ目は、1984年のマッキントッシュだ。
従来のパソコンの使い方をがらりと変えた。
自らがつくり出したアップルⅡをも、過去の遺物にしてしまったのだ。
2つ目は、2001年のiPodだ。
音楽の聴き方だけでなく、CDを買うという音楽の買い方まで変えてしまった。
ジョブズは、iPhoneをこれらに匹敵する製品として紹介し、「今日、
我々は電話を再発明する」と言った。
言葉通りiPhoneは、スマートフォンの時代を切り開き、従来の携帯電話を古臭いものに
してしまった。
・ 改善による飛躍と一線を画す
新しいものの登場によって、それまで広く利用されてきたものが過去の遺物になる
ケースがある。たとえば、大衆に手の届くT型フォード車の登場は、馬車を駆逐した。
馬を買い求める必要もなくなってしまう。
そのように、すべてを一瞬にして過去の遺物にするほどのイノベーションを、ジョブズは
目指していた。
ビル・ゲイツが得意とする「たゆまぬ改善」による飛躍とは、一線を画す考え方だ。
2人とも歴史を変えた偉大なイノベーターだが、ジョブズのほうが圧倒的人気を誇るのは、
一瞬で歴史を変えてしまう一種の爽快感を伴う飛躍だったからではないだろうか。
第12話 最高傑作は次回作。「次こそ」を渇望し続ける。
・ ジョブズはなぜ転身しなかったか
「ウォルト・ディズニーはいつもこう言っていた。『我々の値打ちは、次回作で決まる』と。
だから、常に次を考え続けなければいけないんだ」とジョブズは語った。
これが彼の原動力の1つだと言っていいだろう。
・ あくまで得意分野を歩む
「僕が得意なのは、才能のある人材を集め、何かをつくることです」と言い残してアップルを
去ったジョブズは、新しくつくった会社ネクストでも優れた製品をつくり、やがてアップルに
復帰する契機をつくっている。
さらに、映画監督のジョージ・ルーカスから買収した会社をビクサーと名づけ、自己資金を
投入し続けた。
そして、『トイ・ストーリー』で長編アニメの世界に革命を起こす。
復帰したアップルでは、iMac、iPod、iPhone、iPodと、いずれも業界を劇的に変える製品を
つくった。
そのエネルギーの源は、「次回作」への渇望なのである。
この続きは、次回に。