会計は「ザックリ」のほうがよくわかる! ⑬
「大きな変動がないから細かく見なくても大丈夫」という考え方では、なかなかよいファイナンシャル・
アナリストにはなれませんし、上手な仮説を立てることもできないと思います。
例えば、あるラーメン屋の週単位の売上が、直近2週間とも同じくらいで全く変動がなかったとします。
ところが、先々週は天候が悪く、毎日ほとんど雨だったとします。
先週は月末の週で、天候にも恵まれ毎日晴れだったとします。
まず、天候がラーメン屋の売上に影響を及ぼし、晴れの日のほうが雨の日よりも売上が多いと
いう仮説を立て、過去数か月のトレンドを分析・検証してみます。
すると、売上と天候に相関関係が認められました。
ということは、先々週は雨だったため晴れだった場合に比べて実は売上が下がっており、
先週は晴れだったにもかかわらず、売上が増えなかったのには別の理由があった可能性が出てきました。
そこで、ラーメン屋の売上は、給料日前の週のほうが大きく、給料日後の週のほうが
小さいという仮説を立て、再度そういう観点から過去数か月のトレンドを分析・検証してみます。
すると、月によって変動幅に多少の違いはありますから仮説が正しかったとします。
そこで、給料日後の週は、多くの顧客はレストランに流れてしまっているのではないかという
仮説を立て、来月は何か特別なキャンペーンを実施してみようと考えていくこともできます。
このようにして、ザックリ把握力、ザックリイメージ力、ザックリ仮説力を駆使し、
分析・検証することで、本来の数字の意味に近づけるかもしれません。
これからは数字を眺めるだけでなく、数字の呟くシナリオにもぜひ耳を傾けてみるように
してください。
Epilogue 会計は「ザックリ」のほうがよくわかる!
〔ポイント〕
⚪ まとめてはザックリ説得力で!
プロローグでお話ししたように、会計の目的はコミュニケーションです。
「ザックリ把握力」「ザックリイメージ力」「ザックリ仮説力」を駆使して立てた仮説や
シナリオも、人に伝わらなければ宝の持ち腐れです。
ここで肝心なことは、何を伝えたいか、何を伝えるかではなく、相手に何が伝わったかなのです。
もちろん、自分の伝えたいことを、相手に伝えるのがコミュニケーションです。
しかし、大抵の場合、自分の伝えたいことを相手が100%理解してくれるとは限りません。
どうしても相手にわかってもらいたいことだけを、ザックリでも構わないので
理解してもらうためには、どのように伝えれば効果的かと考えながら伝えることが大切です。
例えば、何かを数字で説得するときに、ただ数字を並べて見せて「はい、わかってください」と
言っても、相手が自分の意図通りに理解してくれることは少ないと思います。
相手の立場に立って、相手の知識、興味、利害などをザックリと把握し、もし自分が
相手ならどのように理解するかとイメージし、説得のシナリオを色々と考えてみてください。
その際、数字やデータを使うと客観性を強調できますし、グラフや表は視覚的効果が高いので、
これらをうまく使いながら、「ザックリ仮説力」で鍛えたロジックを駆使してみてください。
もちろん、伝え終わってからも、相手が何をどう理解してくれているのかを忘れないでください。
決算書はわかりやすく!
この続きは、次回に。