認知症にならないための 決定的予防法㊾
海馬
一方、海馬(豆のかたちをした脳内の小さな領域)は皮質から膨大な量の感覚情報を受け取り、
それを整理し始めます。
情報が過多になり、流入してくるあらゆる情報を保持しなければならなくなると、
それを防ぐために海馬は情報をふるいにかけ、保存すべき情報と、捨てるべき情報を
選ぶようになります。
記憶を保存しようと海馬が判断するかどうかは、二つの要因によると考えられています。
その情報に情動的な価値があるかどうかと、すでに知っていることと関連するかどうかです。
私たちが学び、記憶することの多くは、脳が関連付けをおこない、連想したものを
想起する能力に関係があります。
海馬は毎秒、信じがたいほどの量の情報を判断しているため、脳の血液供給による
エネルギーにたいし、高い代謝要求をしています。
血圧が少しでも下がったり、栄養成分が変わったりすれば、あるいはコルチゾールが
増えてホルモンに変化が起きるだけでも、海馬は影響を受け、その結果、学習や記憶にも
響いてくるわけです。
脳の構造的な変化
24歳から80歳までのあいだに、人間の脳に生じる構造的な老化の整理機能を見てみましょう。
◽️ 脳重量は15%から20%減ります。
◽️ 脳への血流量は20%減ります。
◽️ 線維や神経の数は37%減ります。
◽️ 脳容量は65歳から0.5%から1%縮小します。
◽️ アルツハイマー患者は毎年、脳の3%から5%を失う可能性があります。
脳の一部の領域は、それ以外の部分よりも多く萎縮するかもしれません。
たとえば、前頭葉(精神的能力には重要な部分)が縮みます。
新皮質(考える脳)は70代、80代、90代になるとどんどん使いはたされ、大脳辺縁系(情動脳)でも、
とくに新たな記憶が処理される海馬の細胞が失われます。
海馬では49歳から80歳のあいだに、25%以上の細胞が現象の一途をたどります。
白質も現象します。脳の白質はミエリンからできています。
これは脂肪質の白い物質で、脳細胞と樹状突起間の伝達速度を維持し、向上させるのに
役立っています。
白質に変化が起こると、認知処理の速度(記憶、行動、問題解決、意思決定、注意力)、
つまり頭の回転の変化につながります。
それでも、脳のなかの特定の部分でなんらかの機能が失われているさなかでも、私たちの人間的、
情動的な能力は年齢とともに発達しつづけます。
私たちが知恵と呼ぶものは、生涯の経験を通じて進化するものなのです。
よく言われることですが、経験はまず結果を突きつけ、それから教訓を与えます。
こうした教訓を積み重ねることで、人間は知恵を獲得しているのだと私は考えています。
この続きは、次回に。