認知症にならないための 決定的予防法㊽
脳はどう動くのか—そしてなぜときに忘れてしまうのか!
脳には三つの主要な領域—-前脳、中脳、後脳—があります。
後脳と中脳には、心搏数、呼吸、平衡感覚、協調性、筋肉の動き、それに一部の感覚情報など、
体の機能を処理する構造が含まれています。
こうした機能は、自律的なもの、つまりそれについて考えなくともすむものなので、
脳の<低次>の機能と考えられています。
前脳は、空腹、喉の渇き、感覚情報のような脳の<低次>の機能と、記憶、倫理、意識的思考、
資格、聴覚、言語と言った、脳の<高次>の機能の双方にかかっています。
前脳には、情動を処理する構造のネットワークである辺縁系が含まれる。
1章の25ページで、最初に考える脳<新皮質>と情動的な脳(大脳辺縁系>については
ご説明します。
アルツハイマーの予防に成功する秘訣は、情動的な脳を考える脳が支配する状態を
維持することなのです。
脳には異なった領域ごとに、特定の機能があることを科学者は発見しています。
たとえば、このページを読んでいるいまは、<視覚野>と名づけられた脳の領域を使っているのです。
目から得た情報をニューロンがとり込んで、それを脳の後ろにある視覚野に送ると、
情報はそこで処理されて、脳の別の場所へ送られます(この位置にあるため、後頭部を
打ったときに、<星が見える>ことになります)。
しかし、物忘れがひどくなる、重要なものの置き場を間違える、
新しい概念を学ぶのが困難になる、あるいは単に絶好調ではないと感じるなど、老化に関連すると
私たちが考える不具合の多くには、脳の二つの特定の領域がかかわっています。
大脳皮質と海馬、つまり学習と記憶において非常に重要な役割をはたす脳の二つの領域です。
大脳皮質
老化とともに衰える脳の特定の領域は、ロークス・コエルレウス[青斑核]とスプスタンティア・
ニグラ[黒質]です。実際には、ロークス・コエルレウス(<青い場所>を意味します)はストレスや
パニックへの生理的な反応をつかさどっています。
ここから警戒心や集中力、攻撃性、意欲に関連した神経伝達物質、ノルアドレナリンが放出されます。
この青斑核の細胞が変性すると、だるさを覚え、濃いコーヒーを飲んでもそれが治りません。
アルツハイマー病ではこれらの細胞が失われるため、患者は無感動になり、パーキンソン病の
ような病気になります。この病気もまた、私の家系に伝わるものです。
新皮質(考える脳)は使用しないでいるととりわけ影響を受け、刺激がない場合には萎縮して
しまいます。
こうした萎縮は、筋萎縮と同様に、通常は60歳以降に起こります。
先に述べたように、新皮質は知覚、空間認識、意識的思考、言語、実行機能を含め、
多くの機能にかかわっています。
しかし、この脳の領域で最も多大な損失は、二番目と四番目の層、および前葉等と側頭葉上部にある
小さいニューロンにおいて起こり、90歳になるころには、その細胞の半分が失われる場合が
あります。
新皮質のこうした領域が衰えると、言葉や見たものを理解する能力が失われ、それとともに
顔や場所などの見慣れたものを見分けることができなくなります。
こうした損失は、失認[アグノシア]と呼ばれます。
これはギリシャ語で<知識>を意味するグノーシスという言葉に由来しています。
脳の運動野で起こる、失行[アプラクシア]と呼ばれる同様の現象では、服を着たり、
身だしなみを整えたりといった通常の能力が失われ、やがては歩行もできなくなります
(プラクシスはギリシャ語で<動き>を意味します)。
アプラクシアになると、ある動作をする運動機能はあるのに、それをどうすればよいのか
忘れてしまうのです。
アルツハイマー病の後期には、失行と失認が顕著に見られます。
言葉を換えれば、日常における活動をする能力を失うのです。
[失認は、以前は知っていた知識を失うことであり、それにはペンが道具であると
判断することから、配偶者の顔を見分けることまで、あらゆるものが含まれます。]
この続きは、次回に。