認知症にならないための 決定的予防法㊼
6 ステップ3—脳の強化 脳の予備力を大きくするための日々のニューロビスク
アルツハイマーをどうすれば防げるのか理解するには、われわれがどのように記憶し、
その記憶をどうとりだすのかを理解しなければなりません。
前述したように、アルツハイマー病の最初の兆候には、短期記憶と記憶の想起に関する
問題があります。
これらはどちらも新しいことを学ぶうえで欠かせない能力なのです。
脳はどのように記憶を生みだすのか
脳の中には、実際には五感だけでなく、六感あるのです。
これらの感覚には嗅覚、聴覚、視覚、触覚、味覚、さらにおそらくそのいずれよりも強い
感覚である<情動>[本能的な欲求にかかわる感情]が含まれます。
子供に教える最良の方法は、彼らに伝え、見せ、それから自分でやらせることなのです。
記憶の予備力をつけることも、それと変わりません。
記憶は複雑な数のニューロン、樹状突起、シナプス、それにグルタミン酸塩やアセチルコリンなどの
神経伝達物質によって調整されています。
ニューロンの森を通過するシグナルが記憶や思考、感情の基礎を形成する一方で、ニューロンは
アルツハイマー病によっておもに損傷を受けるタイプの細胞でもあります。
年をとっても維持されている特定のニューロンとその接続ワイヤーは、将来を予期しながら、
私たちの年代順の記憶を過去と現在で、きちんと分離しています。
しかし、明確に規定され分離されていたこれらのわたやーや格納段階も、混乱をきたすことが
あります。
それらがアルツハイマーになって、経路となる樹状突起やスパインの格納場所、軸索、
および神経細胞を、破壊的なベータアミロイド・タンパクが攻撃したときに生じることなのです。
これらのワイヤー、シナプス、および神経伝達物質は、それらが使われている限り残ります。
これらが活性化されればされるほど、結びつきが強くなり、経路も長くなり、それによって
こうした記憶の想起がより簡単になるのです。
樹状突起とスパインの数が減れば、格納されていた情報にアクセスするのが難しくなります
(アルツハイマーではこうした事態が起きます)。
老人斑と神経原線維のもつれが拡大すると、明確な道筋もしくはワイヤーが壊れ、
それとともに過去と現在を区別する特別の壁、もしくは区切りも崩れていきます。
脳のなかでワイヤーが壊れると、アルツハイマー患者は恐ろしい錯覚や幻覚に苦しみ、
理解ができず、現在について理論的に考えることもできなくなります。
なぜなら、現在というのは、私たちが最近のことと、遠い過去の記憶の双方を覚えていられるか
どうかに左右されるからです。
脳の成熟
多くの人は、脳の老化が中年期以降に始まると考えていますが、健康な若い成人を対象とした
神経心理学の検査では、もっとずっと若い24歳ごろから、頭の回転は遅くなっていることが
わかっています。また、40歳以降は7年ごとに、脳の処理速度が目に見えて衰えてくることも、
同じ検査は示しています。
頭の回転と思考能力には大きな—-そして重要な—-違いがあるのです。
私がいま知っていること(総合的な思考能力)のほうが、24歳のころに知っていたことを
はるかに上回っているという点に関しては、頭のなかではなんら疑いもありません。
それでも、頭の回転、つまり問題を処理し学ぶ能力は、間違いなく遅くなっています—-
脚の速さも同様ですが!
人生の後半において段々に知能面が衰えてきても、高い知性や計画的な勤労習慣、
分別のある判断などが、それを補っていることはわかっています。
さて、年齢を重ねるごとに脳に生じるあらゆる変化が悪いわけではないことに気づくのは重要です。
むしろ、年齢を重ねた脳における多くの変化は、必要かつ役立つものなのです。
4歳から10歳までの年齢の子供には、言語を学ぶ優れた機能が備わっています。
この年齢で言語を学べば、出身がわかるような訛りはなくなります。
その後、24歳で脳の回転の速さはピークを迎えます。
歴史を振り返ってみれば、アインシュタインの相対性理論を含め、多くの科学的、
数学的発見は、24歳以前になされていることがわかるでしょう。
この続きは、次回に。