認知症にならないための 決定的予防法-53
社会の強い絆が脳を鍛える
年をとるにつれて、私たちのつきあいの範囲は狭まりやすいものであり、社会的な交流に
関連する脳の領域もまた狭くなります。<使わないものは、失ってしまうのです>。
ニューロビスクの重要な点の一つは、他者とかかわる機会を見つけることです。
権威ある医学誌『ランセット』に発表されたある画期的な研究では、スウェーデンのストックホルムで
1200人の被験者を3年にわたって調査した結果、社会的な交流関係が限られている人は、
認知症やアルツハイマー病を発症するリスクが60%高いことが判明しています。
そのほかの研究結果では、50代で長期の良好な人間関係を保っている人は、80代になってからも
健康であることに相関が見られました。
社会的なかかわり自体が、脳の健康に総合的によい影響を与えます。
社会的なふれあいを通じて情動的にかかわることも、ニューロビクスの主要な戦略なのです。
ジムに通って、あるいは友人とともにトレーニングをすることは、脳の刺激を与えて、
ストレスのレベルを下げるので、脳を鍛えられる可能性が増え、二重の効果があります。
二重の効果が、努力を結集させるのです。
不健康な脳には何が起きているのか(30歳以降)
提案してきたニューロビスクを始めていただく前に、体と脳の健康状態を保つことがなぜ
大切なのかをご説明したいと思います。
体の健康を保つために訓練するように、日々の脳の訓練は30歳を超えたらとくに重要になります。
30歳以降は、脳は老化しやすくなるからです。
あいにく、衰えていく脳は急激に変化する可能性があります。
脳は20%もの重量と血流を失いうるだけでなく、神経伝達速度も遅くなります。
こうしたことすべてが思考過程をのろくするのです。
脳が不健康な人の多くは、体も不健康です。
加齢とともに、歩いたりジョギングしたり、水泳したりする際に体が使える酸素量が60%ほども
減ります。また、口のなかの味蕾の数も減りますし、新陳代謝が悪くなり、握力が弱くなるのは
言うまでもありません。ということは、若いときと同じだけの結果をだすためには、
より多く訓練しなければならないことになります。
ボケてきた脳を活性化するにはもう手遅れだ、などと考えて、本書を閉じる前に、一つ朗報があります。
生き残っているニューロンには拡大した樹状突起が見られ、老齢化しているニューロンにも
新しいシナプスを成長させて、細胞の喪失に逆行する能力があることが、研究から判明しているのです。
新しいシナプスは新しい連想を生み、脳を鍛える道筋であるため、重要なのです。
この続きは、次回に。