認知症はもう怖くない ⑫
薬が認可されるには営業力や政治力も必要
アリセプトが該当するかどうか定かではありませんが、新薬が認可されるには営業力と政治力も
必要とされる場合が多い、というのは多くの医療関係者の知るところでしょう。
薬が研究開発され、承認されるまでには相当の年月を必要とします。
ごく大ざっぱにいうと、製薬会社が承認申請するまでには十年以上を要することが多く、
厚生労働省による審査も最低でも二年程度はかかります。
認知症に関して言うのなら、アリセプトをもらっただけで、「これを飲めば大丈夫」とばかりに、
他の治療法をシャットアウトしてしまう患者さんやご家族も少なくないようです。
その結果、症状が徐々に進行してしまうこともあります。
薬というのは万能ではないし、新薬誕生に際してもそのすべてが公平に審査されているとは
断言できないことを知っていただけたらと思います。
アリセプトが効かないからとレミニールを出す医者はヤブ
現在、アルツハイマー型認知症の薬物療法には、抗認知症薬としては以下の四種類が使用されて
います(いずれも商品名)
・ アリセプト
・ リバスタッチパッチ及びイクセロンパッチ
・ レミニール
・ メマリー
アルツハイマー型認知症では、脳内の神経伝達物質であるアセチルコリンが低下することで
神経ネットワークに以上が発生すると言われています。
薬物治療では、アセチルコリンの分解を促進するコリンエステラーゼの邪魔をする
コリンエステラーゼ阻害剤が使用されます。
それがアリセプト、リバスタッチパッチ及びイクセロンパッチ、リミニールという三種類の
抗認知症薬です。
これに対してメマリーは、NMDA(N-メチル-D-アスパラギン酸)受容体の部分的阻害剤で
認知症周辺症状(異常興奮など)を改善する薬です。
つまり、メマリー以外の三種類はみな、作用機序が同様ということになります。
ところが医師のなかには、アリセプトが効かないと訴える患者さんにレミニールを処方する医師も
いるというのです(大学病院などしっかりとしているはずのところではあり得ないと思いたいのですが—)
薬事法でも、この三種類の併用は認められていません。
アリセプトが効かない患者さんにレミニールも効かないのです(逆も同様)。
ではなぜ医師のなかに、このような人がいるのか?
不勉強の人もいるでしょうが、病院の経営を考えて「あえてそうしている」人もいるのでは
ないでしょうか。
少しでも長くつきあえる患者さんは、病院にとってはありがたい存在なのです。
アリセプトが効かない患者さんにレミニールを処方する—-こんな医師はヤブ医者と断言して
間違いありません。
また、多くの医師がメマリーを抗認知症薬として処方していることにも、注意を払って
いただきたいと思います。
先ほど述べたようにメマリーは、興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸の受容体の一つである
NMDA受容体の部分的阻害剤です。
NMDA受容体というのは、学習・記憶の細胞モデルであるシナプス伝達長期増強・抑圧現象(LTP・LTD)を
誘発するためになくてはならないものです。
NMDA受容体を完全に阻害すると、学習・記憶ができなくなってしまいます。
したがって、メマリーを大量または長期間服用すると、逆に認知機能が悪化する可能性が
あるのです。
この続きは、次回に。