お問い合せ

『トヨタで学んだ「紙1枚!」にまとめる技術』⑦

15. 書き出す作業に「時間制限」を設けたほうがよいのはなぜ?

先ほどの例のようにフレームが8個ある場合であれば、テーマが書かれている1個を除き残り7個の

フレームを埋める時間の目安は1分です。

もし1分たったところで7個すべて埋まらなかったら、いったんそこで作業は終了します。

フレームの数が16個なら2分程度、32個なら5分程度を上限に設定するとよいでしょう。

なぜ、このような時間制限が必要なのか?

最大の理由は、時間を決めないと「いつまでもダラダラと考えてしまってまとまらないから」です。

実は、先入観や固定観念、思い込みにとらわれている人ほど、この青ペンによるキーホード出しの

作業を苦手とする傾向があります。

 

時間短縮のために時間をかけていては本末転倒

キーワードを書き出す時間を決めるもう1つの理由は、「目の前の作業に一層集中できるように

なるから」です。「崖っぷち」に立たされれば、余計なことを考える余裕はなくなります。

そのぶん、目的達成のための集中力がグッと高まるのです。

「エクセル1」で考えるときのもう1つのポイントは、1回で完璧にやろうとしない」ことです。

やってみて納得がいかなかったら、何度もやってみればよいのです。

1枚にかかる時間はせいぜい3〜5分。

何十分もかけて最初から完璧を目指そうとするより、短時間で、何枚も挑戦するほうが結果的に

よいものが仕上がります。

 

16.「パソコン」と「手書き」、どちらのほうが効率的か?

「エクセル1」のフレームは、パソコンなどで作ったほうが楽にできます。

しかし、「紙1枚」にまとめることに十分に慣れてきた場合は別として、最初のうちはあまり

おすすめしません。理由の一つは、フレーム数がテーマに応じて柔軟に変わってくるからです。

アイデア出しを重視するならフレーム数はできるだけたくさんあったほうがよいですし、セミナーなどの

受講メモを書く場合なら、1つのフレームはある程度大きいほうが便利です。

また、実際に手を動かしながらフレームを「書く」という動作は、「考えをまとめる」を始めるための

ちょうどよいウォーミングアップにもなります。

 

「動作」を変えれば「気持ち」はあとからついてくる

嫌な仕事、乗り気でない案件ほど、つい後回しになってしまう。

「やらないといけない」と頭でわかっていても、「やりたくない」という気持ちが勝って、

最初の一歩を踏み出せないのです。

気持ちが「よしやるぞ!」というやる気モードに切り替われば理想ですが、気持ちから変えようと

思ってもすぐにできるものではありません。

そこで、まずは行動を変える。そのために動作から入るのです。

 

それでも「手書き」でやることをおすすめする理由

トッパン・フォームズ株式会社が行った実験によれば、パソコンの画面を見るときと紙面を見る

ときとでは、同じ情報でも脳の働き方が異なり、紙面を見たときのほうが、情報を理解しようと

する部位である前頭前皮質が強く反応する、という結果が報告されています。

これらの根拠から、紙面で、手書きで行うという現在の型にたどり着きました。

一見効率が悪いように感じるかもしれませんが、あなたの脳がデジタル社会に適応して進化を

遂げていないのであれば、かえって効率的なのです。

 

17. 目的を見失いそうになったら「この口ぐせ」をとなえなさい

書類をまとめるに当たり、どんな種類のものであっても、最初に立てるべき共通の問いがあります。

それは、「そもそも何のために、この『1枚』を作るのか?」というものです。

あなたがこれから仕事で作ろうとしている書類はなんのためなのか、その目的を明確にするのです。

先述の「たたき台」をはじめ、『トヨタの口ぐせ』((株)OJTソリューションズ/KADOKAWA

[中経出版])という本にも出ているように、トヨタには社内で飛び交うさまざまな独自の言葉が

ありますが、私の経験上、おそらくもっともトヨタらしい口ぐせがこの「そもそも」です。

 

「誰」に読んでもらう書類なのかをはっきりさせる

「1枚」を作るうえで、「そもそも何のために作るのか?」を考えるときには、ちょっとしたコツが

あります。まず、自分がこれから作ろうとしている書類の「読み手」をはっきりさせます。

「1枚」を読む相手(もしくは伝える相手)が誰なのかを確認しましょう。

読み手をはっきりさせたら、次は「その相手にどのような反応をしてもらいたいか」を考えます。

このように、「1枚」には必ず読む相手、もしくは伝える相手がいます。

そしてその相手が期待した反応や行動をしてくれてこそ、役立つものになるのです。つまり、

「そもそも何のために作るのか?」という問いには、書類の読み手とその読み手に期待する反応、

行動をはっきりさせるために欠かせないものなのです。

 

「自分のため」に立てた企画は通らない

この問いはまた、自分本位の書類になってしまうことを避けるためのものであります。

「自分のため」の段階で止まってしまうと、結局は自分のためにならないうえ、結果もうまく

いかないことが多いのです。

自分の企画を通すために自分が伝えたいことだけをひたすら訴える企画書は、まず通りません。

企画書の読み手は、企画書を読みながら、この企画にゴーサインを出してよいかどうかを考えます。

その判断材料となる情報を企画書に求めています。

「相手が知りたいことは何か?」を無視して、自分が伝えたい情報だけを載せても、相手の心を

動かすことはできません。そこで、「自分のため」というもう一段階視点を上げて、読み手、

受け手に配慮をするようにします。

その相手にどう反応してほしいのか、期待する反応をしてもらうためには、どんな「紙1枚」に

すればよいのかを考える。

結局はこれが、自分の企画を通すことになり、プレゼンに共感してもらうことにつながるのです。

 

 

この続きは、次回に。

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