池上彰のやさしい経営学 1しくみがわかる ③
社会主義経済はうまくいかなかった
私が学生時代、もぅ40年以上前になりますが、その頃の日本では、経済学というのは2種類ありました。
一つは社会主義の「マルクス経済学」。カール・マルクスが考えた経済学です。
もう一つはそれに対抗する「近代経済学」。
経済学の種類:マルクス経済学と近代経済学
結局、社会主義経済の国々は崩壊してしまいました。
社会主義経済:国家による計画経済。国家が、必要なものを調べてすべての生産計画を立て、
その計画どおりに生産をする経済体制のこと。計画経済とも言われる。
資源の最適配分は、国家の一握りのエリート官僚が計画を立ててやったのではうまくいかなかった。
市場=マーケットで、みんなが自由にものを交換するというやり方でやったほうがうまくいくと
いうことになったんですね。
経済学的なものの見方を見につけよう
現在、近代経済学は「マクロ経済学」と「ミクロ経済学」という大雑把にこの2つの分け方で
考えるようになっています。
マクロは、全体的なとか、大きいという意味ですね。ミクロは細かいとか小さいという意味です。
要するに、大きくとらえるか、小さくとらえるかの違いです。
マクロ経済学というのは、たとえば日本の景気が悪い、あるいは世界の景気が悪いときに政府は
どんな対策をとればいいのだろうかという、大きな経済のメカニズムを考える学問です。
一方、ミクロ経済学というのは、私たち消費者やそれぞれの家計がどんな消費行動をとるのか、
また、それぞれの企業が限られた資源をどのように有効に使い、どれだけの従業員を雇って、
どんな商品をどう売っていくのか、そういう細かいメカニズムや法則性、そういうものを見つけて
分析する学問です。
マクロ経済学=大きな経済のメカニズム
ミクロ経済学=家計や企業がどんな行動をとるか
家計:経済基盤をともにする最小単位の集団。経済学では家計が消費を行うと考える。
何を選択し、何をすてるのか。それが経済学
まず、経済学というのは、選択の学問と言っていいでしょう。
ありとあらゆることを選択するんですね。
そこには、あらゆる資源は必ず限られている、有限であるという「資源の希少性」という考え方が
あります。限られた資源をどう選択するのか、それが経済学であると言えます。
資源の希少性:人間の欲望に対して資源は限られている。
人間には無限の欲望があるのに対して、その欲望を満たすための資源は限られていること。
この考え方によって、経済の基本問題が発生する。
限られた資源を何に使うのかということによって、世の中は大きく動いていくわけですね。
まさにこれは選択するということです。
そして、何かを選択しているということは、それ以外のことを捨てていることになります。
あなたが何かを選択したということは、その代わり何かを捨てているのです。
その捨てているもの、これは、「はじめに」でも取り上げた「機会費用」です。
何かを選択することによって、別の貴重なチャンス、すなわち「機会」を捨てている、その費用を
払っている、こういう考え方もできるのです。
機会費用:選択によって失う機会のこと
この続きは、次回に。