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池上彰のやさしい経営学 1しくみがわかる ⑬

Chapter4 資本主義は失業者を生み出すマルクス

 

—-失業者が生まれ、格差が広がっていく現代の日本。

社会主義の生みの親であるマルクスは、

「資本主義経済は失業者を生み出す」と予言しました。

一方、ソ連や中国などの社会主義国では、

近年、経済体制の見直しが進められています。

 

巨大資本家はこうしてその数を減らしながら、この変容過程がもたらすいっさいの利益を

奪い取り、独占していくのだが、それとともに巨大な貧困が、抑圧が、そして隷従と堕落と

搾取が激しくなる(『資本論』より)

 

社会主義の父、カール・マルクス

資本主義経済はうまくいくのだろうか、さまざまな問題を引き起こしたのではないか。ヨーロッパ、

とりわけイギリスの労働者の悲惨な状況を目にして、資本主義は間違っている、これを何とか

しなければならないと、新しい経済理論を打ち立てたのが、カール・マルクスです。

 

カール・マルクス Karl Heinrich Marx (1818〜83)

ドイツの経済学者、哲学者。資本主義経済を分析、批判し、マルクス主義を創始。主著に『資本論』。

 

派遣切りがきっかけとなったマルクスの再評価

マルクスは社会主義を打ち出した人物です。

彼の理論によって、ソビエト社会主義共和国連邦をはじめ、中国、北朝鮮、ベトナム、キューバと

いった多数の社会主義の国が生まれました。

しかしソ連が崩壊し、東ヨーロッパの国々も次々に社会主義を放棄しました。

 

年越し派遣村:派遣契約の解除などで突然仕事や住居を失った人たちを支援しようと、労働組合や

市民団体などからなる実行委員会が東京の日比谷公園に簡易宿泊所を設置、炊き出しや生活・

職業などの相談が行われた。

 

マルクスを支えた親友エンゲルス

マルクスがひたすら『資本論』を執筆し、働かないで研究に専念するための生活費は誰が

出していたのかというと、エンゲルスというマルクスの親友です。

そのマルクスとエンゲルスの思想を合わせてマルクス・エンゲルス思想と言ったりします。

 

フリードルヒ・エンゲルス Friedrich Engels (1820〜95)

ドイツの社会主義哲学者。マルクスとの共著で『共産党宣言』(1848年)を出版。

後半の人生をマルクスの著作の編集と翻訳に費やした。

 

労働が富を生み出す—労働価値説

 

労働価値説:労働によってあらゆる価値が生み出されている。

 

資本家と労働者

『資本論』の最初を読むと、いきなり「商品とは何か」という分析から始まります。

「資本制生産様式が君臨する社会では、社会の富は『巨大な商品の集合体』の姿をとって現われ、

ひとつひとつの商品はその富の要素形態として現れる。

したがってわれわれの研究は商品の分析から始める。」

 

なんのことかよくわからないと思います。

私たちの身の回りを見渡すといろいろな商品がありますが、ありとあらゆる商品には値段がついている。

考えてみれば資本主義の世の中では商品にみんな値段がついていて、その商品を私たちが買ったり

売ったりすることによって経済が成り立っていますよね。

つまり商品こそがこの社会をつくっている基礎になるんだ、だからその商品の分析から始めようと、

そういう書き方をしているんです。

 

商品には2つの価値がある

マルクスによれば、商品には2つの価値があると考えるんですね。

まずは使用価値。つまり、使って役に立つという価値を持っているということです。

商品にはいずれも使用価値があります。

その一方で、りんごとみかんを交換する、鉛筆と消しゴムを交換するという、交換価値というのも

あります。じゃあ、なぜ交換することができるのか。

それは使用価値があるからでしょう。使用価値があるから交換価値も生まれるということになります。

 

使用価値:使って役に立つという価値

 

交換価値:ものとものを交換することができる価値

 

商品の交換価値は労働力によって決まる

こうしてものを交換していくわけですが、りんごとみかんでは使用価値が違いますよね。

あるいは鉛筆と消しゴムも使用価値はそもそも違うものです。

でもそれが一定の割合で交換できるということは、その交換価値の中に何か共通のものが

含まれているのではないかとマルクスは考えたのです。

では、さまざまな商品を、どのくらいの比率で交換するのか。

同じ労働力の量が含まれている商品同士だから交換できるのだとマルクスは考えました。

「交換価値」の価値の基本になっているもの、それは労働力なんだというふうに考えたわけですね。

なんと言っても労働価値説。労働があってこそいろいろな富が生まれるわけですから、労働力に

よって価値が生まれているのだと考えました。

 

 

この続きは、次回に。

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