池上 彰のやさしい経済学2 ニュースがわかる ①
今回は、前回の「池上 彰のやさしい経済学1 仕組みがわかる」の続編となります。
興味がございましたら、是非、購読してください。
池上彰のやさしい経済学2
ニュースがわかる
池上 彰 著 テレビ東京報道局 編
日経ビジネス人文庫
はじめに
毎日のニュースに出てくる為替相場。円高ドル安、ユーロ安——。
いくらになれば円高で、どこから円安になるのか、疑問に思ったことがあるのではないでしょうか。
過去の円高によって、輸出産業が打撃を受け、日本国内から脱出をはかる企業が出ました。
これを「産業の空洞化」と言います。これにより、日本経済に悪影響が出ました。
円高の上に、日本はデフレが続いてきました。でも、インフレとデフレは、どう違うのでしょうか。
デフレが悪いことのように言われますが、それはどうしてなのでしょうか。
デフレ対策には日本銀行の金融政策が重要だと言われますが、金融政策と財政政策は、どう
違うのでしょうか。2008年に発生したリーマン・ショックは、世界経済を大混乱に陥れました。
きっかけは、アメリカの住宅バブルの崩壊です。
最先端の金融技術によって生まれた新しい金融商品が、世界経済を不安定なものにしたのです。
いったいどんなしくみなのか。日々のニュースは、こうした経済の用語があふれています。
新聞を読んでも、なかなか理解できないことが多いのではないでしょうか。
そこで、この『池上彰の優しい経済学』では、毎日登場する経済にュースが理解できるように、
経済学の基礎を1と2の二分冊に分けて解説しました。
1を読んだ後で、この本を読めば、よりよく理解できると思いますが、この本だけを単独で読まれても
理解しやすいようにしているつもりです。
この本で取り上げている年金など社会保障の問題は、とりわけ学生の関心が高く、若者たちの
危機意識に驚かされました。と同時に、いまの若者たちが、日本の社会保障制度を知らないまま
不安になっていることに気づきました。知らないから不安に思うことは、いくらでもあること。
まずはよく知ることから始めなればなりません。
その点、授業では学生たちか活発に議論に参加してくれて、盛り上がりました。
学生たちの参加があったからこそ、講義が成立し、この本も生まれることになったのです。
学生に、そして大学当局の協力に感謝します。
2013年9月 ジャーナリスト・東京工業大学教授 池上 彰
インフレとデフレ—合成の誤謬(ごびゅう)
—–日本ではいま、デフレが深刻な問題になっていますが、経済の歴史を見ると、これまでは
インフレとの戦いでした。
キーワードは「合成の誤謬」です。インフレ・デフレともに、人間の心理が大きく影響しています。
その経済のメカニズムを具体的に学んでいきます。
デフレに苦しむ日本経済
今回は、インフレとデフレを取り上げます。
これまでの日本は、デフレ、デフレとよく言われてきましたね。
このデフレからどうすれば脱出できるのか、大きな議論が続きました。
デフレとは、物価がどんどん下がっていく、持続的な物価下落のことです。
デフレーションの略ですが、デフレーションというのはぎゅーっと縮んでいくというイメージです。
かつては、デフレよりインフレの方が深刻な問題とされてきました。
インフレはどんどん物価が上がってくる、持続的に物価上昇のことです。
デフレとは逆に、わーっと広がっていくイメージです。
そこで、まずはインフレとは具体的にどんなことなのか考えていきましょう。
インフレには、実は人間の心理が非常に大きく影響していることが見えてきます。
インフレとは持続的な物価上昇
インフレとは、どんどん物価が上がってくることを言います。
とにかく供給より需要が多いわけです。
需要と供給の関係では、欲しいという人の方が多ければ、ものの値段は上がりますよね。
いったんものの値段が上がると、さらに上がるかもしれないから今のうちに買っておこうという人が
殺到します。結果的にさらに需要が増え、またものの値段が上がる。
そしてまた、さあ大変だ、いまのうちに買っておこうという状況になれば、お金の流れがどんどん
活発になっていきますよね。
経済全体がわーっと膨らんでいくイメージ、これがインフレというものです。
ざっくりと言えば、インフレーションというのは膨張していくという意味です。
経済全体が膨張していく、膨らんでいく、これがインフレーションです。
インフレ:インフレーションの略称。物価水準が持続的に上昇する現象のこと。
この続きは,次回に。