池上 彰のやさしい経済学2 ニュースがわかる ⑪
資産効果と節税対策によって消費がどんどん増える
このような現象を経済学では「資産効果」と言います。
資産が増えたことによって、気が大きくなって色々な買い物をしてしまうことです。
資産効果:所有する土地や株式の資産価値が高まったりすることが、消費行動などに与える効果。
収入-経費=所得⇦税金はこの部分にかかる
物価高にブレーキをかけなければいけない
ところが、これだけ景気が良くなりすぎると、当然ながら物価が上がってきます。
日銀は、このままではいけないと考えました。
このあたりでブレーキをかけなければいけない、よし、公定歩合を引き上げようと検討します。
公定歩合を引き上げて、銀行からお金を借りるときの金利が高くなれば、土地を買い占めるという
動きがおさまってくるだろうと考えました。
ブラックマンデー—株が大暴落した
1987年10月19日。ニューヨーク株式市場が大暴落しました。
その日が月曜日だったことから、黒い月曜日、ブラックマンデーと呼ばれました。
ブラックマンデー:1987年10月19日の月曜日に、アメリカのニューヨーク株式市場で起きた株価の大暴落。
予言の自己実現:最初の誤った状況の規定が新しい行動を呼び起こし、その行動が当初の誤った考えを
真実なものとすること。
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政府と日銀が重い腰を上げた
日銀は困ってしまいました。ここで金利を引き上げたら、資金がアメリカから日本に流れ込んで、
アメリカの株価がどうどん下がってしまう。
アメリカは、株価が下がるようなことはしないでくれと日本に圧力をかけます。
アメリカの言うことをすぐ聞いてしまう日本は、金利を上げることができなくなってしまいました。
低金利のままの状態が続き、ますますバブルは拡大します。
このときドイツは、アメリカが何を言おうと関係ないと言って金利を上げ、その結果景気の過熱を
抑えることができ、バブルが膨れあがらずにすみました。
日本はアメリカに遠慮したため金利をあげることができず、物価高が一層激しくなったのです。
そこで当時の大蔵省、今の財務省と金融庁の全身が、何とか土地の値段にブレーキをかけようと
行動を起こします。それが「総量規制」というものでした。
それと同時に、とにかく土地を大量に持っていれば儲かるという状態を改めなければならないと
いうことで、「地価税」という新しい税制度を導入しました。
土地の相続税評価額0.3%の税金をかける制度です。
さらに日銀も思い腰を上げ、ようやく公定歩合を引き上げます。
1989年5月からわずか1年3カ月の間に5回の金利引き上げを行いました。
2.5%だった金利は、1990年にかけて6%まで引き上げられたのです。
総量規制:金融機関の不動産向け融資の伸び率を、総貸し出しの伸び率以下に抑えることを
軸にした行政指導。
地価税:1992年から98年まで施行された土地保有税のひとつ。
毎年、原則として土地の相続税評価額に0.3%を課する税制。
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突然土地が売りなくなる!
こうして、銀行からお金を借りて土地を買う不動産業者が突然姿を消しました。
企業も銀行から土地を買うお金が借りられなくなったので、土地の売買をやめます。
ある日突然、土地がバッタリ売れなくなったのです。
さあ、需要と供給の関係で考えるとどうなりますか。
土地の値段が暴落しますね。土地神話の崩壊です。必ず上がるとおもっていた日本の地価が、
突然大暴落しました。貸したお金を返してもらえなくなる、これが不良債券です。
各銀行はこの不良債券の山を築くことになりました。
不良債権:回収不能、またはその懸念がある金融機関の貸し出し債券。
この続きは、次回に。