池上 彰のやさしい経済学2 ニュースがわかる ㉑
直間比率の見直し
税金には直接税と間接税があります。
直接税は、その税金を負担する人と払い込む人が同じです。
所得税は、働いた人が直接収めるわけですから、直接税になります。
これに対して間接税は、その税金を負担する人と払い込む人が異なります。
間接税の典型的な例は消費税です。
直接税と間接税をどれくらいの比率にしたらいいのかというときに、よく出てくる言葉が直間比率です。
直間比率とは、直接税と間接税の比率を何対何にしたらいいのかということで、世界の先進国で
標準的なのが5対5。税収のうち、直接税で入ってくるのと間接税で入ってくるのがほぼ同じと
いうことです。
日本はどうなっているかというと、直接税が6に対して間接税が4です。
これを5対5にしたほうがいいのではないかという議論があります。
これが直間比率問題です。直接税を減らし間接税を増やす。あるいは直接税はそのままで間接税を増やす。
つまり消費税を上げるという話が直間比率の見直しです。
直間比率の見直しについて議論が行われたというニュースが出たら、消費税を上げるかどうかの
議論が行われたと読み替えてください。
直接税と間接税の特徴を言うと、直接税は所得税や企業が払い込む法人税です。
これは景気の影響を受けやすい。不景気になると当然収入が減るわけですから、所得税なども減ります。
不景気になったとたんに、直接税はどーんと下がります。でも不景気になったからといって、
買い物を急に減らすことはありません。
少しずつ減らしていくかもしれませんが、すぐに減らすことはありません。
だから消費税の収入はすぐには減らない。景気が落ち込んだときに、間接税の比率が高いと、
国の税収が急に減ることはないんです。ところが直接税のほうが多いと、景気が悪くなったとたんに
国の税収も減ってしまうという問題があります。だから直間比率をなるべく5対5にしたほうが
いいのではないかという議論が行われるのです。消費税の逆累進性が問題視されています。
消費税のように所得が多い人ほど税金の比率を高くしていくのが累進課税で、累進性があります。
消費税では、お金持ちもそうでない人も、買うものにそんなに違いはないだろうという前提があり、
税率が上がると結局収入が少ない人の負担の割合が高くなります。これが逆累進性です。
直接税と間接税:直接税は、法律上の納税義務者と実際の税の負担者が同一である税金のこと。
間接税は、法律上の納税義務者と実際の税の負担者が同一ではない税金のこと。
消費税、酒税などが代表的。
直接税と間接税の特徴
直接税は景気変動を受けやすいため、不況時には税収が大きく落ち込む。
間接税は景気の影響を受けにくい。
逆累進性:税率が高くなると、所得の低い人の負担の割合が高くなること。
「日本の直間比率は6対4」
2010年度の国税を見てみると、総額43兆7,074億円のうち、直接税は約56%。
間接税は約44%と、およそ6対4になっています。国税の内訳で最も多いのは、所得税の29.7%。
続いて法人税。直接税には所得税や法人税、地方法人特別税、相続税が含まれ、間接税には消費税を
はじめ揮発油税、酒税、たばこ税、関西、自動車重量税などがあります。
「国税の内訳」
直接税—所得税29.7%+法人税・地方法人特別税23.8%
間接税—消費税23.0%+揮発油税7.0%+酒税3.2%+たばこ税2.5%+関税1.8%+自動車重量税1.7%+
その他の間接税4.4%
この続きは、次回に。