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池上 彰のやさしい経済学2 ニュースがわかる ㉓

リーマン・ショックとは何だったのか?

——-“リーマン・ショック”はなぜ起きて、どのように世界経済に悪影響を与えたのか。

“投資銀行”とは何か、その最先端の金融手法とは?

やさしい言葉でわかりやすく解説します。

リーマン・ショックが引き金となり、世界中が金融危機へと突入しました。

 

世界経済に影響を与えたリーマン・ショックとは

日本ではバブルが崩壊して以来、長い間デフレが続いているという話をしましたが、実は07年くらいから

日本経済がようやく立ち直ってきて、08年に入ってからデフレを脱却できそうな状態になってきました。

ところが2008年9月、アメリカのリーマン・ブラザーズという会社が経営破綻したことによって

世界に金融不安が広がり、日本経済は再びどん底に突き落とされてしまったのです。

リーマン・ショックさえなかったら、日本はデフレから脱却していたかもしれません。

ではそのリーマン・ショックとは何だったのか、そもそもリーマン・ブラザーズとはどんな会社か、

扱っていた最先端の金融商品とはどんなものなのか、そのしくみについてお話しします。

 

リーマン・ブラザーズ:リーマン3兄弟によって1850年に創業。

150年以上の歴史を持つアメリカ第4位の名門投資銀行だった。

 

リーマン・ブラザーズは“投資銀行”

リーマン・ブラザーズは、投資銀行(Investment Bank)という日本にはないアメリカ発祥の金融機関です。

アメリカの金融機関は、商業銀行と投資銀行と証券会社の3つに区分されます。

日本の場合、投資銀行業務は証券会社が行っています。

 

投資銀行 Investment Bank:株式や債権の引受け業務、企業の合併・買収(M&A)の仲介、

財務戦略への助言などを行う金融機関。預金業務は手がけない。

 

アメリカの商業銀行、証券会社とは

アメリカの3つの金融機関の区分にはどんな違いがあるのでしょうか。

まず商業銀行、英語でコマーシャルバンク、これが日本でいう普通の銀行のことです。

預金を預かってそれをいろいろな会社に貸す、これが商業銀行です。

もしこの商業銀行が潰れてしまうと、預けていたお金が返ってこなくなるかもしれないと多くの

お客さんがパニックになりますよね。

ですからアメリカの中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)が、経営破綻しないようにチェックを

したり、いざというときには救済したりするしくみになっています。

証券会社というのは、お客さんから注文を受けて株を売り買いするところです。

それ以外にも、たとえば新しい会社がニューヨーク証券取引所などに上場するとき、その手続きを

してくれます。日本でも東京証券取引所や大阪証券取引所といった株を売買する場所がありますが、

株式会社の株なら何でも売り買いできるというものではないんですね。

この証券会社がちゃんとした経営をしているか、不正なことをしていないかということを監視する

組織がアメリカにもあります。それがSEC(証券取引委員会)です。

 

商業銀行:Commercial Bank)

証券会社:Securities Company)

SEC(証券取引委員会):投資家保護と証券市場の健全性維持を任務とするアメリカの証券取引

監督機関。

 

次々と姿を変えた投資銀行

2008年9月、全米第4位の大手投資銀行で会ったリーマン・ブラザーズは破綻しましたが、

アメリカの他の大手投資銀行もその姿を変えることになりました。

全米第5位の投資銀行だったベアー・スターンズは08年5月、経営悪化により政府保証のもと

JPモルガン・ブラザースに救済合併されました。

第3位のメリルリンチは、リーマン・ブラザーズの破綻と同じ9月15日、商業銀行である

バンク・オブ・アメリカによって救済合併。

第2位のモルガン・スタンレーと全米トップのゴールドマン・サックスは同じ9月、銀行持株会社へと

転換しました。

こうして姿を変えて生き残った投資銀行は、FRBの監視下に入ることになったのです。

 

 

この続きは、次回に。

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