訪日外国人インバウンド市場 攻略の鉄則-10
Part5 枠組みが広がる「免税」制度を活用しよう
訪日外国人の消費額がついに2兆円を突破した。
訪日外国人の旺盛な消費パワーを引き出した「免税対象品目の制限撤廃」「手続委託型輸出
物品販売制度」の仕組みや、免税品になる手順などを解説する。
✔️ 2兆円を突破した訪日外国人の消費パワーの源は!?
まずはショッビング環境の変化から理解しよう!
訪日外国人の消費額が右肩上がりで伸びている。
いまや日本経済を引っ張る成長エンジンと目されているほどだ。
何が訪日外国人の消費意欲をかきたてているのか。
「外国人旅行者向け免税制度に関する協議会」の事務局長を務める大本昌宏氏に訪日外国人の
ショッピング環境を取り巻く環境変化について語ってもらった。
Keywords ◯ 消費拡大の背景
・ 円安や政策を追い風にショッピング需要高まる
増税などの影響で日本人の個人消費が伸び悩むなか、訪日外国人の消費パワーが存在感を
増しています。
2014年には2兆円を突破し、2兆305億円と過去最高額を更新しました(図表1)。
2012年に1兆円の大台に乗ってから、わずか2年で消費額が倍増した計算です。
海外観光客の消費額が急拡大している背景には、いくつかの要因があります。
まずは安倍政権が観光立国の推進を成長戦略の柱にしたことです。
観光ビザ(査証)の発給要件を緩和し、Wi-Fiをはじめとした公衆無線LANやクレジットカードの
利用環境の向上と合わせて、消費税免税制度の改革によって海外観光客のショッピング需要が
盛り上がっています。
・ 制度見直しで注目集める買物代を追い抜く
消費税免税制度とは、「消費税免税店を経営する事業者が、外国人旅行者などの非居住者に対して
一定の方法で販売する場合には、消費税が免除される」という制度です。
2015年4月には免税手続きを第三者に委託する「手続委託型輸出物品販売場制度」が創設されました。
これら一連の制度改革によって訪日外国人は買い物がしやすくなりました。
一方の店舗側にとっては免税店になることで、訪日外国人の旺盛な消費需要を取り込めるチャンスが
得られることになります。訪日外国人、店舗双方にとってメリットのある制度改革だったことから、
今後の拡大に期待されます。
図表1 訪日外国人の消費額の推移
2011年 8,135億円
2012年 10,849億円
2013年 14,167億円
2014年 20,305億円
図表2 旅行支出に占める買物代の割合は拡大傾向
2012年–宿泊費34.2%+飲食費20.5%+交通費10,9%+娯楽サービス2.7%+買物代31.4%+その他0.2%
2014年–宿泊費30.1%+飲食費21.3%+交通費10.8%+娯楽サービス2.3%+買物代35.2%+その他0.4%
columu ガラパゴス状態の日本の免税制度が世界のスタンダードに!?
世界では40を超える国で免税制度が導入されていますが、日本以外の国は出国時にまとめて申請を
する事後免税制度のため、税金を払い戻すための手続きに時間がとられるという難点を抱えています。
一方、1952年に誕生した日本の免税制度は、買い物した店舗で「購入者誓約書」にサインするだけで、
その場で免税される事前免税制度です。
出国時には税金にパスポートなどに貼付された購入記録票を提出するのみなので、他国に
比べると手続きが非常にスムーズです。
事前免税制度の国は現時点では日本だけという“ガラパゴス状態”ですが、日本の制度を参考に、
制度見直しの機運が高まっている国も出てきています。
この続きは、次回に。