超ロジカル思考 「ひらめき力」を引き出す発想トレーニング⑨
STEP3 ジョブズに学ぶ「未来を自ら創りあげる」トレーニング
Steve Jobs
✔️ 最強のビジネスリーダー、ジョブズ
3番目にご登場いただくのは、スティーブ・ジョブズである。
情報革命の中を勝ち上がってきたビジネスリーダーとして、最強の人物と言えるだろう。
ジョブズ亡き後も、アップルは世界で最も優れた企業、最も価値ある企業としてその名をとどろかせて
いる。ジョブズは、マッキントッシュ・iPod・iPhone・iPadといった優れた製品を世に生み出した
ことで知られる。しかし、単に製品だけを見ていては、ジョブズの功績を過小評価してしまうことに
なりかねない。
ジョブズが社会に及ぼした影響について、ここであなたにも考えてみてもらいたい。
Exercise 3-1
ジョブズの登場によって、世の中がどう変わったのでしょうか?
ジョブズが社会に及ぼした影響について考えてみてください。
ジョブズが登場するまでは、コンピュータは企業の中枢で大量のデータ処理を行うものだった。
ところが、ジョブズは一般の個人がコンピュータを使うようになる新しい世界を見出したのだ。
しかも、コンピュータ言語を覚えて打ち込むのではなく、グラフィック・インターフェース(GUI)上の
マウスでクリックするだけで、自由自在にコンピュータを操作できるようになった。
ジョブズは、CDやDVDも不要にした。
✔️ エンジニアではない“素人”ならではの強み
ジョブズは「コンピュータに何ができるかではなく、コンピュータを使ってクリエイティブな人は
何をするか」が重要だといっている。“素人”のジョブズは情報革命によって、クリエイティブな人の
ライフスタイルがどう変わっていくのかを見ていたのだ。
だから、「人を自由にする学問」が役に立ったのである。
✔️ 直感のパワーを生かす
ジョブズは「直感が花開き、いままで見えていなかったものが見えるようになる」という言葉を
残している。
五感を澄まして世界を観察し、無意識の世界を活性化させ、クリエイティブに人に合わせて
自分の脳をシンクロさせる。それによって、いままで見えていなかった潜在ニーズや将来の
ライフスタイルが浮かび上がってくる。
そうした活動を通じて、ジョブズは誰よりも早くエスキモーを見ることができたのである。
また、この原理を逆用し、クリエイティブな人たちの五感を刺激し、無意識の世界に訴えかけ、
共感を引き出し、強烈な印象を残すことにも成功している。
彼のデザインの基本思想は「直感的に物事がわかるようにすること」である。
つまり、トリセツによって頭で理解する製品ではなく、無意識の世界が感じ取る製品を創り出した
のだ。そのために「共感、フォーカス、印象」を自らのマーケティング哲学としている。
✔️ 未来は自分でコントロールできる
ジョブズの好きな言葉に、「未来を予測する最良の方法は自分で創りあげることだ」というのがある。
サムスン電子のビジネスモデルを理解するために、エクササイズをひとつ出したい。
Exercise 3-2 サムスン電子のエレクトロニクス事業の成功要因を挙げてください。
⭐ ヒント
日本のエレクトロニクスメーカーが簡単に真似できなかったことを考えてみましょう。
地域専門家とは、新興国に送り込まれたサムスンの社員たちのことで、最初の
6か月間は仕事を
せずに、現地の人と同じ生活をすることを求められる。
なぜ同じ生活をするのかというと、それによって現地の人が受けているのと同じ刺激が自分の
無意識の世界に入ってくるからである。そうした入ってきた経験に、タグがくっついて記憶されていく。
それがある日、そうした検索パターンに引っかかり、現地の人たちと同じ世界観が、自分の意識の
世界に飛び込んでくる経験をする。そうしたことを6か月間繰り返しているうちに、頭の中の
検索パターンが現地の人たちに合わせてチューニングされていくのである。
ステップ1で紹介した花王やザ・リッツカールトンの目利き育成のプロセスと似ていないだろうか。
サムスンは1990年代初めごろから、こうした形で地域専門家の育成に取り組み、千人単位の人材を
育てている。最初の6か月間は仕事をしないのだから、サムスンにとっては相当なコスト負担をともなう。
しかし、だからこそ他社が躊躇しているうちに、後から追いつけないほどの圧倒的な数の地域
専門家を育てあげることができた。
多くの国でナンバーワンのシェアを取ることが可能になったのである。
サムスンの第1の成功要因はこの「地域専門家」であるといえよう。
✔️ 日本企業は、なぜサムスンに負けたのか
サムスンは設計構造を徹底してモジュール化することにした。
最終製品が1,000モデルあったとしても、実際には少数のモジュールをレゴのように組み替えて
作るのであれば、それほどコストは上がらない。
この設計のモジュール化が、サムスンの第2の成功要因といえる。
その国で売られた製品数量のうち、クレームの数が一定の比率内に収まっていればよしとする
考え方で、多少不具合があっても安いほうがいいという国を想定したものだ。
「品質の良し悪しとは主観によるもので、その主観は国によって異なる」というモノの見方から
生まれてきている。この体感不良率も、日本企業がやりたがらないことの一つといっていいだろう。
ライバルがやりたがらないことが成功要因になるという点で、これも第3の成功要因と言える。
この続きは、次回に。