超ロジカル思考 「ひらめき力」を引き出す発想トレーニング㉑
・ ジップカーが行き詰まったのはなぜか
ジップカーはボストン、ワシントンDC、ニューヨークの3つの街で事業を展開した。
ところが、事業の成長は当初予想したほど芳しくなく、3年後には会員数6,000名、車の保有台数
130台で頭打ちになった。そして、事業を黒字化する見通しが立たないまま、ついに資金が底を
ついてしまった。それでもチェイスは希望を捨てず、仲間作りの活動を続けていけば、
必ず採算が取れるようになると主張した。しかし、取締役会は彼女を解任することを決定し、
その後スコット・グリフィスが新たなCEOとして選任されることになった。
さて、ここで次のエクササイズに取り組んでみてもらいたい。
Exercise 6-4
あなたが新しいCEOのグリフィスだとして、何をすればジップカーを成長させられると思いますか?
また、取締役会がチェイスを続投させなかった理由についても考えてみましょう。
グリフィスが新しいCEOとして着任した当時、社内には会員を増やすためのさまざまなアイデアがあった。
しかし、グリフィスはそれらのアイデアを実施に移すことはいったん取りやめた。
その代わりに、彼はある調査を行った。
それは、ジップカーのことは知っているが、会員にならないことを決めた人たちを集めて、
その理由を聞くというものだ。
そこからわかってきたのは、車までの距離が遠いことが、会員になることを阻んでいるという
ことだった。いくら環境に優しいとはいっても、家から一番近い車でも10ブロック以上先にある、
車を借りるのに30分もかかる、といったことで会員を増やせないことが明らかになったのだ。
・ 「会員にならなかった人たち」を探る
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・ 頭になかった答えを導き出す
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・ シリコンバレーの投資家は、何投資するのか
この話の中に登場するふたりのCEOの違いが、この仮説の設定と検証の能力にあったことは
いうまでもないだろう。
チェイスは自分の作戦がうまくいかなかったとき、その原因や解決策について仮説を示すことが
できなかった。取締役会にとってこれが一番困る。
なぜなら、仮説がなければ検証することもできず、その人がCEOに就いている限り、事業の成長は
期待できないという結論になってしまうからだ。
これが取締役会がチェイスを解任した理由である。
一方、グリフィスは仮説の設定と検証に長けた人だったことがわかる。
それが事業のポテンシャルを目利きする力につながっている。
これこそ投資家がビジネスリーダーに最も期待するものだ。
仮説設定・検証力は、生き残るCEOと去り行くCEOを分けるほど重要なものなのである。
起業家は、まず新しい事業プランを構想する。
その中で、まだ生まれていない市場構造・事業構造・収益構造について仮説を立てる。
そこで、ベンチャーキャピタルから投資資金を引っ張るのだが、ここで、投資家が資金を出すか
どうかを、どのように判断しているのかについて考えてもらおう。
Exercise 6-5
ベンチャーキャピタルは、起業家の事業プランに対して資金を出すべきかどうか、何に基づき
判断しているのでしょうか?
過去に実績のない起業家が、まだ市場も存在していない新規事業に取り組んでいるケースを
イメージしてみてください。
どのような解答になっただろうか。
想定市場規模、成長性、収益性、実行可能性などを挙げた人は注意が必要だ。
これらの指標はすでに存在する事業に関しては意味を持つが、まだ市場も存在していない事業に
関してこれらを見積もってみても、参考指標にはなれども、判断の拠り所にはならないだろう。
それでは起業家の人間性はどうだろうか。
確かにその人物が約束を守れる人かどうかは、資金を提供する上で重要になる。
しかし、それだけでは十分でない。構想力や実行力などは参考になるだろうが、それをどう
評価すればいいのだろうか。
実際に多くのベンチャーキャピタルが判断の拠り所にしているのは、そのアイデアが検証可能か
どうかである。
そのアイデアを検証する方法があれば、それに必要となる費用を見積もることができる。
そして、それを上回るに十分な期待リターンがあると判断できれば、投資対象になりうるのだ。
起業家にとって最も重要なのは仮説設定・検証力だということだ。
ジップカーでグリフィスがやったことを思い起こしてもらえれば、仮説の設定と検証が効果的で
あるほど、最短の時間とコストで、事業の成功要因やポテンシャルを割り出せることがわかるだろう。
この続きは、次回に。