ビジネススクールでは学べない世界最先端の経営学 ㉜
✔️ 社内メールを支配するのは誰か
※ 省略致しますので、購読にてお願い致します。
スチュワートらは、2006年9月から12月にこの社内で交わされた電子メールのやりとり総数1億1400
万件を、同社の許可を得てサーバーから入手し、その中からデータとして信頼性の高い1万5000人の
電子メールのやりとりを統計分析したのです。
その結果は、興味深いものでした。本稿で重要なのは以下の四つです。
結果1:女性のほうが男性よりも、社内電子メールの利用数が多い。
結果2:女性同士が社内メールを交換する頻度は、女性と男性がメールを交換するよりも頻度が62%も高い。
結果3:他方、男性同士がメール交換をする頻度は、女性と男性のメール交換頻度よりも低い。
結果4: 女性同士のメールのやりとりは社内横断的である。すなわち、「同じ部署にいるか、部署を
またいでいるか」にかかわらず、女性同士がメール交換をする頻度は高い。
逆に男性同士がメール交換する頻度が高いのは、2人が同じオフィスにいるときだけで、オフィスの
垣根を越えての男性同士のメール交換機会は極端に減る。
このスチュアートらの分析結果は、前出のイバラの結果とまったく反対になっています。
イバラの研究結果は、男性のほうがホモフィリー人脈を活用しやすい、というものでした。
しかしスチュアートの結果2を見ると、むしろ女性同士の交流がはるかに密になっています。
さらに男性同士の交流は、男性と女性の交流よりも弱くなっています。
それどころか、「女性同士のホモフィリーなメール交換」は、部署・オフィスの垣根を越えて、
社内中に行き渡っているのです。
✔️ 女性のほうが人脈づくりに向いている
なぜイバラとスチュアートの間で、逆の結果が出たのでしょうか。
ここからは私個人の解釈になりますが、前者は「人と人のリアルな直接交流による人脈形成」を分析
していたのに対し、後者は「電子メールによる人脈形成」を分析しているからではないでしょうか。
すなわち、リアルな交流とオンラインの交流では、ホモフィリーな人脈形成の帰趨が、男女で逆転する
のかもしれません。
この私の仮説の前提は、そもそも女性の方が人脈づくりに積極的である、というものです。
逆にスチュワートの結果3にあるように、男性同士のホモフィリー人脈は、男性=女性の交流よりも
弱くなっています。そして男性同士の人脈は、組織の垣根を越えられません。
もしかしたら男性の方が組織枠内の人間関係に気をとられすぎで、女性同士のほうが組織の垣根を
越えたコミュニケーションがしやすい特性があるのかもしれません。
このように、職場におけるリアルな人脈と、その水面下で進んでいるオンライン上の人脈の違いと
その関係は、今後のさらなる研究が望まれるとこです。
前者は男性優位ですが、後者は女性が主導権を握っている可能性があります。
この「リアル人脈」と「オンラインの人脈」が補完的なのか代替的なのか、どちらも影響力が強く
なるのかは、私にはわかりません。
しかし、もしオンライン人脈の充実がその人の業績に影響力があるのなら、今後はそれを活用して
昇進する女性が多く現れるのかもしれません。
この続きは、