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IoTビジネス入門 ⑫

■   家ナカに登場する優秀な個人エージェント

 

家ナカのIoTについてもうひとつ触れておきたいのが、「今後の家電は、オン・オフなどを操作する

スイッチ類が不要となる可能性が高い」ということです。

たとえば、pepperのような、賢いロボットが一家に1台あることをイメージしてください。

Pepperには、音声認識の機能や、認識したヒトの言葉を理解し、適切な行動や返答をするような人工

知能が備わっています。

この機能を利用すると、Pepperがある家では、Pepperに話しかけるだけで電気やテレビのオン・オフ

などができるようになるのです。

「Pepperはわかりやすいけど、大きいし、家には置けない」という方もいると思うのですが、実は

米国では、他にも、「ヒトの入力インタフェース」となるモノがたくさんあります。

例えば、「Amazon Echo」。米アマゾン社が提供する、音楽スピーカーです。

初期設定では「Alexa (アレクサ)」という名前が登録されていて、名前を呼ぶと、命令を聞くモードに

遷移します。聞くモードになったところで、「Play Music」と言うだけで音楽が鳴るのです。

ジャズでもピアノでも、ジャンルが存在する場合はそのジャンルを呼びかけるだけで音楽が鳴り始め

ます。もちろん個別の歌手や楽曲名でも指示は可能です。

またAmazon Echoのすごいところは、音楽プレーヤーにとどまらず、音声さまざまな情報を制御で

きることです。

例えば、「天気予報を聞く」「交通情報を聞く」といったこれまでスマートフォンで調べていたことも、

声をかけるだけで教えてくれるのです。さらに、家ナカのさまざまなモノともつながりだしています。

Amazon Echoはモノとの接続方式を一般に公開しているので、モノを提供するメーカーは、

Amazon Echoと接続する仕組みを搭載することで、音声でのコントロールが可能となるのです。

例えば、テレビとAmazon Echoをつなげた場合、テレビのオン・オフや、録画設定などを声で制御

することができるようになります。また、電灯とAmazon Echoをつなげた場合は、電灯のオン・オフや

色の変更なども声で指示できるのです。寒い夜、布団から這い出して電気を消す必要もなくなります。

つまり、モノがヒトとのインタフェースの入り口となり、家ナカのIoT機器を制御する時代がやって

くるのです。

 

■   Googleのアトガマを狙う企業たち

 

インターネットを利用していて、Googleの検索エンジンに助けられているヒトは多いはずです。

Googleの最大の強みはというと、インターネットにおける作業の始まりである、「検索」というところを

握ったことです。

実はGoogleが出てくるまでは、ヒトがホームページをカテゴリ分類していました。

例えば、このホームページは料理にまつわるホームページだ、クルマにまつわるホームページだ、と

いった感じです。

その結果、カテゴリに当てはまらないホームページがあったり、分類するヒトが忙しいと、いくら

素晴らしいホームページであっても、そのURLを何らかの情報で知らない限り、たどり着くことすら

できない状況でした。

そこをGoogleは、ロボットで世界中のホームページを探し出し、ホームページの内容を読み取った上で、

利用者が検索窓に入力したキーワードと近いホームページを表示する。しかも、キーワードによって、

求めるであろうニーズ順に並び替えて掲載することも実現したのです。

実際に普段使っている方も多いと思うのですが、いい加減な言葉をフォームに入力しても、こちらの

意図を汲んだ検索結果を表示してくれるとても便利なモノです。

 

では、このGoogleの強みはどのように生まれたのでしょうか。

それは、徹底的に、インターネット上にあるウェブサイトの情報を集めたからです。

「徹底的」に、「すべて」、です。

10億件以上あると言われているウェブサイトを、URLだけでなく、内容もすべて集めて、Googleの

データベースに格納しているのです。しかも、同じウェブサイトでも頻繁に訪れることで、過去との

違いすら把握しています。

こうやって、徹底的に世界中のウェブサイト上のデータを蓄積し、高性能な分析を加えることで、

これまでではあり得なかった精度でヒトの期待にこたえているのです。

Googleの検索窓に入力されることは、インターネット上で調べたいヒトの欲望そのものなので、入力

された言葉を解析することで、そのヒトがどんなことに興味があり、どういう思考性のヒトなのかと

いったこともわかります。これは、これまでアンケートで取得していた〝曖昧な〟ヒトの嗜好ではなく、

現実にそのヒトが〝今知りたいコト〟なのです。

この事実を元に、Googleは様々なサービスを展開し、プラウザの向こう側にいる消費者に適切な広告を

表示してきました。

このビジネスモデルが巨大な売上げを上げ、インターネットの世界を牽引していく立ち位置を築いて

いるのです。

 

ところが、IoTの社会になったらGoogleはどうなるでしょう。

例えば、PepperやAmazon Echoのような、賢いロボットが一家に1台あるコトをイメージしてください。

賢いロポットたちは、キーボードもなく、話かけるだけで様々な情報を教えてくれるのです。また、

このロボットを通して様々な指示や家電の制御が行われるようになるとします。

すると、「ヒトとやりとりをするロボットを中心」に、「ヒトの欲望のデータが集まり、ニーズが

解析されていく」という流れができます。

つまり、IoTの社会では、「検索という行為をしなくても」ロボットに向かって話しかけるだけで

「適切な」フィードバックが返ってくるのです。

その一方で、Googleにしてみれば、インターネットへの入り口をロボットに取られてしまう可能性が

あるといえます。

こういう状況を見て、多くの家ナカ向けのモノやサービスを作っている企業は、何とかして、IoTに

おけるGoogleの立ち位置へ行こうと考えています。

しかしそれは、決して簡単なことではありません。

さらに、音声やジェスチャーといった、まだ研究レベルでも確率されていない分野に関しての知見が

必須となります。

音声やジェスチャーは、国ごと、地域ごとに違いがあるので、多国語、多地域対応も用意ではありません。

また、どういうモノであればヒトは話しかけやすいのか、という問題もあります。

「ヒトを模したようなロボットが良い」「何もなく部屋にマイクとスピーカーがあれば良い」など

様々な意見がありますが、まだ誰もこの未来を体験したことがないのでこの点も決着がついていません。

つまり、人口知能の精度だけでなく、どういう体験を通して楽しい暮らしをつくるかも課題で、この

分野はまだまだこれからという感があります。

 

 

この続きは、次回に。

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