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IoTビジネス入門 ⑳

第2部     IoTが生み出す産業の変化

 

そもそもIoTは、なぜこれまでに騒がれているのでしょうか。

「すべてのモノがインターネットにつながるから」と答えるのは間違っています。

技術的なコンセプト自体は、十数年前から存在していました。

「工場が進化して、これまで分断されていた生産プロセスが可視化され、生産効率が上がる」

「工場の状態が生産計画とヒモ付いて、精度の高い生産ができる」

というのも限定的な内容なので、一般の生活者には直接的な関係はありません。

さらに、第1部で紹介した事例のすべてがIoTのインパクトかと言われると、これにも疑問がわきます。

なぜそういう感覚に陥るのかというと、そう感じる事例はすべて、技術の進歩と経済の概念からすると、

必然的な「進化」や「改善」であって、「イノベーション」ではないからです。

 

IoTがこれほどまでに騒がれる本当の理由は、IoTによって我々の生活にイノベーションが起きると

考えられているからなのです。

そこで、第2部では、迫りくるこのダイナミックな変化に焦点を当てて、産業や仕事の在り方の変化を

見ていきます。

 

第1章    IoTで変わる産業構造

 

IoTによって変わるのは、モノの在り方や生活という狭い範囲ではありません。

そのインパクトは、すべての業種・業態にわたり、産業構造自体を変化させていくことになるのです。

まずは、どういう変化が起きるのかについて予測も交えて説明していきます。

 

■   IoTによるビジネスモデルの変化

 

IoTは、既存のビジネスモデルの構造を大きく変化させる可能性があるといわれています。

このことを説明するには、まずセンシング技術の向上について理解する必要があります。

 

たとえば、広大な土地に多くの風車があることをイメージしてください。

これを1つずつヒトが点検して回るのは、かなりの時間と労力が必要です。

他にも、ダムの壁面に亀裂があるかどうか、橋の老朽化を調べるなど、危険が伴い、時間がかかる

作業を、これまではヒトが時間と労力をかけて行っていました。

 

しかし、センシング技術とロボット技術が向上すれば、

・  風車のモーターの状態をセンシングして、管理する

・  ロボットがダムの壁面を吸いつくように移動し、画像解析でひび割れを発見する

・  橋を支える構造部分のすぐ近くをドローンが飛び、撮影した画像を解析する

 

といった、かなり高度なセンシングが可能になります。

 

話をわかりやすくするため、ものすごくヒトの手がかかりそうな例を紹介しましたが、みなさんの

仕事でも、こういった「ヒトがやらないといけないけど、時間がかかる保全作業」や「本当はしばしば

チェックできていないこと」などがあるのではないでしょうか。

 

これまで、メーカーは「つくったら売って終わり」という発想が多かったですし、やるべきとわかって

いても、実際に24時間体制で保守・メンテナンスし続けるは、人件費もかかり、かなり大変なことで

した。しかしIoTによって売ったモノの状態を、日々センシングするのが当たりまえになると、その

情報から、

 

「調子が悪くなってきているから、お伝えして修理を促そう」

「システムが古いので、更新をおすすめしよう」

「新しいサービスと連携したから、紹介してもっと使ってもらおう」

「旧製品は不満があるみたいだから、新しいのに交換してもらおう」

 

といった、「モノの利用者」がどうすれば自社製品を使い続けてくれるか、ということを意識した

サービスも「当たり前」となるのです。

 

例えば、すでに、第1部でも紹介した、自動車メーカーのTESLAは、車のオペレーションシステムとも

いえる部分を常に最新状態にアップグレードし、車の制御を最新・最高の状態に維持しようとしています。

この例のように、皆さんの会社においても、自社の製品やサービスについて、「つくって終わり」では

なく、センシング技術を駆使して、クラウド上に情報をアップロードし解析することで、「保守・

改善する」という継続型ビジネスモデルについて考えることが重要です。

 

なぜ「当たり前」になるのかというと、従来の売り切り・買い換えのビジネスモデルのまま、この

状況への対応が遅れれば、モノをつくる会社は危機的な状況に陥ってしまうからです。

ここまでの説明でおわかりいただい通り、保守・管理が進めば、一度購入したモノについて、買い

換える必要が少なくなります。

日々アップロードされるサービスに、故障や顧客の不満はなくなっていくでしょう。

つまり、それらのモノを買った顧客にとってみれば、他社のものに変更する「必要」がなくなるのです。

いいかえれば、IoT社会でものを売るときは、センシングした情報を解析して大きな問題が起きる前に

修復する、常に最新・最高の状態をキープする、といったことを包含することが必須となるのです。

このモデルへの移行は、特に「B2B」のサービスでは急ぐ必要があります。

もちろん「B2C」のサービスだから後回しでも良いというわけではないのですが、B2Bではデザイン

などの好みよりも、機能や安定性などが重視されるケースが多いからです。

個人でパソコンを買うならMacでないとダメだという人でも、仕事で使うパソコンはWindowsでも

構わない、というのと同じです。

機能や安定性の面で技術的に追いつくことができても、他社が一度顧客との関係性を築いてしまったら、

なかなか割って入れなくなります。

そこで、このサービスモデルを他社よりも早く築いていくことが、サービスを継続して提案するポイ

ントとなるのです。

もし、今日時点で自社のサービスや製品が「つくって終わり」だと感じたら、可及的速やかにクラウドを

活用して、このモデルに移行することを検討すべきです。

 

 

この続きは、次回に。

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