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IoTビジネス入門 ⑲

第5章  高齢化社会とIoT

 

人口減少と高齢化社会。これらは先進国に共通の課題といわれています。

すでに老人介護を老人が行う老老介護など、様々な問題が表面化する中で、介護者不足に対する決定的な

施策はうてていない状態です。

そこで、IoTを活用することで高齢化社会をどう乗り切っていくのか見ていきます。

 

■   介護の救世主となるIoT

 

少子高齢化問題は、もはや日本では大きな社会問題といえます。

老人ホームへの入居やヘルパーをお願いするにしても、費用の問題があるので誰もが利用できる状況とは

いえません。また、老老介護といって、要介護者を要介護者が介護するという実態もあります。

都会にでた子どもが両親を介護をするケースでも、親が田舎住まいであるため、子どもは都会での

生活をやめて田舎に帰り親の面倒を見るケースが増えてきました。

ヘルパーをお願いできている場合でも、ヘルパー1人当たりの担当する老人の数が多く、十分なケアが

できているとはいえない状況です。

こういった、深刻な人材不足を解決するために、介護の分野でもIoT化は進みつつあります。

たとえば、Z-Works社のLive Connectというサービスでは、老人介護のシーンで、ベッドに寝たきりに

なっている老人の生体情報を取得する新しい方法が提供されています。

スポットライトなどにセンサーをつけておくだけで、電波を発し、その反射から生体情報を得ることが

できるというモノです。

また、最近の住宅やマンションでは、玄関に人感センサーが付いている物件が多くなってきています。

ヒトがいると電気が点灯するモノで、見たことがある人も多いのではないでしょうか。

人感センサーは、そこにヒトがいるか、いないかがわかることから、他の機器と接続することで利用

シーンが大きく増えます。

 

たとえば、ホームセキュリティの例では、家の中に誰もいないはずなのに、人感センサーがヒトを

感知した場合、そこに侵入者がいることを示します。

介護でいえば、トイレにこの人感センサーを設置しておき、人感センサーが反応したらその情報を

インターネット経由でクラウドにあげて、介護老人が定期的にきちんとトイレに行っていることを

探知する、といった利用シーンがつくれます。

老人ホームの廊下とトイレに人感センサーを複数個設置し、徘徊していないか、トイレには行って

いるか、といった行動を見守ることも実際に行われています。

「監視カメラでいいじゃないか」、と思うヒトもいるかもしれませんが、監視カメラの場合、ヒトは

文字通り「監視されている」と感じてしまうため、センサーで行動を認識しようとする試みも必要と

なるのです。

今後、高齢化が進み、多くの老人を少ない人数でお世話しなければならなくなるので、全員を均等に

ケアすることは現実的に不可能となります。

そこでIoTを活用することで、ある程度のことは機械がやり、ヒトはヒトでなければできないことに

絞って対応することが必須となるのです。

人感センサーや生体センサーなど、比較的一般的なセンサー類を使ったこのサービスは、「がんばら

ない介護」という名前がつけられ、介護疲れを少しでも軽減するサービスとしてスタートしています。

IoTというと何かモノをつくらないといけないと思う方もいるようですが、実際はこういったあるものを

組み合わせて、クラウドサービス部分を構築することで、社会問題を解決することも可能なのです。

自社のビジネスが、「製造業ではないから」という理由でIoTサービスをあきらめるのではなく、この

例のようにうまく組み合わせることでビジネスの糸口を見つけることも可能だと考えましょう。

老人介護のシーンで、ベッドで寝ている老人の排便の状況をモニタリングするシーンもあります。

ベンチャー企業のabaが提供する、Lifinという製品です。

「排泄物の臭い」をセンシングすることで、排便の状況を監視し、排便があった場合は直ちにヘルパーに

連絡するモノです。これによって、要介護者を少しでも清潔な状況にしようと考えています。

実は、臭気センサーは高額なモノであればいくらでも精度よくセンシングすることができるのですが、

このサービスでは、よくある空気清浄機などの安いセンサーを使うというのです。

 

安価に入手できる一方で、センサーとしての精度は低いのですが、この精度の低さを人口知能で補おうと

いう試みなのです。

排便を探知するシートというくらいなので、汚れてしまうことなども考えると高額なセンサーを利用

することができません。

そこで、人工知能を使って性能の悪い安価なセンサーでもうまくセンシングするというのです。

高齢化社会の老人介護における人材不足の問題はかなり深刻です。

しかも、わりと身近な問題でもあるため、参入してくる企業が多い一方で、「見守り」の分野が多いと

いう実態もあります。

見守りの分野では給油器の動作状況をみて、老人がちゃんと生活をしていることを把握するようなものが

以前からありました。そういったモノと比べると、今回紹介したモノは、一歩踏み込んでいる印象を

うけるのではないでしょうか。

特に、ここまで見てきたように「あるものをなるべく活用して社会問題を解決する」「安価なセンサーを

使う一方で、人工知能技術を駆使することで価格面の問題を解決する」というアプローチはとても

重要です。

このように、解決すべき社会問題を見つけたら、解決策を図るべくモノをつくりはじめるわけですが、

その際、価格面でボトルネックになりそうな分野をクラウド側の技術で解決することも解決策の一つと

なるのです。

 

 

この続きは、次回に。

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