IoTビジネス入門 ㉔
第2章 IoTに必須となるグローバリゼーション
産業構造の変化は、なにも日本だけで起きているのではありません。
世界中で起きるIoTとデジタライゼーションによる産業構造の変化。
生き残りをかけた戦いは、グルーバルに起きていることを念頭に置くことから始まります。
■ IoTにおける日本の存在感
日本で生まれた「i-mode」や「ガラケー」を踏み台にして、iPhoneを中心としたスマートフォンが
生まれ、世界中の通信がこの小さなスマートフォンという端末を使って行われるようになりました。
このスマートフォンというモノが世界中で使われるようになったことで、モバイル通信が一般化し、
様々な部品の量産や高性能化が進みました。
電池の性能が向上し、各種センサーも大量生産によって価格が下がりました。
カメラや液晶なども同様です。
さらに、GoogleやFacebookといった企業を中心としたインターネット企業が、大量のデータをクラウドに
蓄積し、人口知能を使って解析することで、これまで考えられなかった体験をごく自然に与えてくれる
ようになりました。
これらの要素が重なった結果、IoTの概念である「すべてのモノがインターネットにつながって、これ
までにない価値を発揮する」というコトの実現を一気に推し進めたのです。
この主要プレーヤーに、日本企業が見当たらないとして、「日本は出遅れている」と言う人がいます。
しかし実際は、IoTにおいて必須となる半導体やセンサーを提供する日本企業は、すでに世界規模で
活躍している事実があります。
クルマやカメラをはじめとして、完成品の分野でも世界的に強いメーカーはいくらでもあります。
企業がデジタライゼーションを果たす時、モノ側に立つか、クラウド側に立つかによって大きく立ち
位置が変わります。
IoTにおいて、モノ側はクラウドに情報を渡すセンサーであり、クラウドからの指示をうけるアクチュ
エーター(フィードバックの役割を果たすモノ)となるのです。
クラウド側とモノ側の構成要素を分割した場合、モノ側については日本にはすでにアドバンテージと
可能性があると言えるでしょう。
一方で、クラウド側はというと、残念ながら圧等的なデータ量を持ち、人工知能技術を活用した
サービスを展開するという意味では、米国や中国企業が一歩リードしている状況です。
ただ、人工知能が多くのサンプルデータ(教師データ)を学習させることで賢くなることは、ここまでに
説明した通りです。
そこで、早いタイミングで多くのデータを扱うことさえできれば、まだまだ挽回の余地がある分野で
あるといえるのです。
人工知能が進んでいる企業の例として、GoogleやFacebookといった企業が上がることが多いのですが、
これらの企業はすでに教師データとなる多くのデータを世界中から集めているので、「インターネット上の
データを扱う」という分野では、たしかに追いつけないレベルまで来ています。
しかし、これはあくまでもインターネット上の話です。
モノに関する情報はまだクラウドにアップロードされていませんし、追いつけないほどの情報が蓄積
されているとは言えない状態です。
いかに、ブラウザとインターネットで情報を蓄積してきたクラウド企業であっても、IoT社会において、
モノがセンシングした情報は、ゼロから取得しなければならないのです。
また、こういったインターネット社会で培われたアルゴリズムとしての人工知能・ノウハウは活かさ
れるモノの、モノに関する情報収集はゼロからのスタートという状態だといえます。
つまり、世界的に見ても、IoTにおけるモノの情報収集と人工知能の育成に関しては、どの企業も同じ
スタートラインに立っているといえるのです。
さらに、モノが主役になる時代においては物理的な場所も重要になります。
たとえば、自動運転カーのための道路データを集めるとき、日本のデータは日本にいたほうが集め
やすいでしょう。
他にも、セキュリティ関連ビジネスでは、治安の悪い国のほうがニーズもあるため、情報が集まり
やすいといえます。
今後日本の存在感を出していこうとする際、こういった物理的な制約を考慮して、いち早くデータ収集を
行い、より賢い人工知能を育成することが、IoTにおける該当分野での支配権を得る近道だといえるのです。
この続きは、次回に。