IoTビジネス入門 ㉖
■ 自分の代わりにロボットを働かせて稼ぐ
「ロボットに仕事を奪われるのか」ということについて話すとき、まず「ロボット」と呼ぶものの
本質をつかむことが重要です。
ロボットというヒト型のものをイメージするヒトも多いと思うのですが、ここまでIoTについて理解を
進めてきたみなさんにとっては、ここでいうロボットも、モノとしてみればIoTにおいては、「センサーで
あったり、アクチュエーションするモノであったりするだけ」、ということが理解できたのではない
でしょうか。
つまり、「ロボット」の本質は、ヒト型ロボットである場合もあるかもしれないけれども、実際は
ドローンかもしれないし、ドアかもしれないし、コーヒーメーカーかもしれない。
人工知能で制御され、ヒトへのアクションができるモノなのです。
しかも、この人口知能はゼロから何かを学ぶわけではありません。所詮はヒトが教えて動かすモノなの
です。ヒトが教える必要がある以上は、ヒトがロボットを使うのであって、ロボットにヒトが使われる
ことはないといえます。
たとえば、家ナカのロボットは、ヒトと対話する中で、家電製品をコントロールするし、自動運転カーに
おけるロボットは、各クルマから情報を受け取り、渋滞状況などを加味した適切な走行ルートをクルマに
フィードバックするという役割を果たすのです。
このように、様々なことが自動化される中で、ロボットに任せられることはロボットに任せ、ヒトは
生活により便利で新しいモノを生み出す作業をしていくのです。
つまり、今後のIoTの社会においては、ロボットに仕事を取られるという発想ではなく、むしろロボットを
自分が使って、自分の代わりに働かせるという発想が重要なのです。
また、ロボットに任せて余った時間はヒトとのコミュニケーションに使い、より文化的なサービス業が
盛り上がり、新しい産業が生まれることでしょう。
さらに、ロボットには「責任」がないので、当面の間、責任の所在はヒトに残ることになるでしょう。
物流網では積み荷に間違いがないかを確認したり、製造業では製品の品質チェックをしたり、保険業では
交通事故の原因を評価したり、家ナカ家電にどの製品を選んだかによって火災保険の保険料を変えたり—-
そういう意思決定は、当面、ロボットに補助されつつも最終的にはヒトが責任を取ることになるのです。
■ IoTビジネスを考えるときに大切なこと
最後に、あなたがIoTについてこれから新しいサービスや製品を企画したり、実現したりしなければ
ならなくなった時の考え方を示します。
現在、IoTと呼んでいるモノの多くは「インターネットにつながっているだけ」のことが多い状況です。
ヒトへのフィードバックについても、スマートフォンに何かデータが表示されるだけのモノが多いのが
現状です。
IoTの概念を考えると、本来は「アクチュエートする」ところまで実現できる必要がありますが、それが
実現されているケースはまだ少ない現状があります。
そこで、皆さんがIoTサービスやビジネスを考えるときは、もっと複雑なことを人工知能で考え、モノを
アクチュエートすることにより、「ヒト」にフィードバックを返すところまでやるべきなのだ、と
念頭においてください。
また、あなたがモノをつくるメーカーのヒトであれば、もしかしたらクラウドサービスを構築するのが
得意ではないかもしれません。反対に、インターネット開発企業の人であれば、モノづくりが苦手かも
しれません。そういう場合でも、他社のサービスとどんどん接続して、「センシングからクラウドを
介して、アクチュエート」という流れ全体としてサービスを提供するように考えましょう。そして、
何よりも一刻も早く自社の強みを生かしたサービスを生み出しましょう。
みなさんが生み出すIoTが、様々なサービスと連携して、デジタライゼーションが果たされた社会の
大切な部分を担っていることを祈念しています。
この続き、次回に。