お問い合せ

書籍「10年後の自分」を考える技術 ⑥

✔︎ 一段高い視点から見ることで気づきの範囲が広がる

 

つながりを見つけ、全体を俯瞰できるようになれば、視野が拡大し、本質的な

課題に手を打つことができるようになるのである。

 

✔︎ その行為は、1年で何時間になるか?

 

通勤のうち電車のなかで過ごす時間を1時間と仮定してみると、1日で2時間、

1週間で10時間、一年で約500時間になる。

それだけの時間を勉強や研究につぎこめば、博士号までいかずとも、何か

とてつもなく大きなことができそうだ。

 

まわりがみんなそうだからといって何も考えずに生活していると、こうした

「一段高い視点で全体をつかむ視点」はやせ細っていく。

 

最初は「1時間の通勤は時間がムダだな」と少し思っていても、徐々に

慣れていって、何も感じなくなる。

でも事実、1年で500時間もの時間をムダにしているのだ。

 

人生の1時間の価値をお金に換算して仮に3000円とするなら、3000円×500時間=

150万円もの大金を支払っていると考えることもできる。

 

つながりを見つけて徐々にズームアウトしていく視野を身につけるには、

このような常日頃から「なるべく俯瞰してものごとを見よう」と意識することが

重要なのである。

 

✔︎ 頭のなかに「地図」を描け!

 

もう少し身近な例を挙げるなら、タクシーで行けば直線で5分とかからない場所に、

電車を乗り継いで何十分もかけて「遠回り」していないだろうか?

 

たしかに電車のほうが安くすむかもしれないが、時間も体力も費やすことを

考えると、どちらでいくのがいいのか、一度は立ち止まって考えてみることが

必要だろう。 

 

私が行っている経営コンサルティングでも、こうした「地図」を描くことは

とても有効だ。

 

業績が悪化している企業に出向き相談を受ける際、ときに企業経営者たちは、

問題はとても複雑で手に負えないと言い、まず経営数値を細かく説明しようと

する。しかし、業績の問題に限っていえば、それを決めているのは「売上」と

「費用」の2つの要素(変数という)であるし、それはさらに「売上=単価×数量」

「費用=変動費用+固定費用」という4つの変数に分解できる。

要は、この4つの変数のいずれかがおかしくなっていないと、業績は悪化の

しようがないわけだ。

 

課題が明確に見えれば、問題の8割近くは解決したも同然である。

全体を見渡す努力をすることによって地図を描き、「霧を晴らす」ことが

重要なのだ。

 

✔︎ 「最初のちょっとしたこと」に着目しよう

 

一段高い視点でものごとを俯瞰的にみることができるようになると、いま

自分がやっていることが将来どういう影響を及ぼすか、という視点も持てる

ようになる。

 

自分では小さなことだと思っていたことが、長時間かけて積み重なることで

大きな現象になったり、つながりの連鎖で想像もしていなかった大きな影響を

及ぼすようになったりすることは意外と多い。

 

つながりの連鎖でいえば、初期のささいなことがその後の大きな流れを

決めてしまうことを、経済学では「経路依存症」という。

よく引き合いに出されるのは、パソコンのキーボード配列の例だ。

 

機能的には劣っていて非効率であっても、「一度広まってしまったやり方」は

なかなか変わらないのである。

 

ごく些細な歴史的な偶然(初期値)がその後の経過を決めてしまうという、

この経路依存症は、他にもたくさんあるだろう。そして、一度決まったことは、

その後に非効率な状況を生んでも、なかなか変えられなくなる。

 

未来を決めているのは、大きな単一の意思決定だけではない。

日々の小さな意思決定も大きく影響している。

なぜなら、ひとつずつ小さな意思決定が「経路依存的」に作用し、その行く先を

自動的に決めてしまうことが多いからだ。

このような経路依存症を頭の片隅に置き、「今やっていることは、長期的な

視点でも間違っていないか?」「この意思決定でのちのち後悔しないか?」と

俯瞰的に考えるだけでも、視野は広がっていく。

 

✔︎ つながり思考力の鍛え方

 

どうすれば、モノゴトを一段高い視点から見たり、ちょっとした変化や違いに

気づいたりすることができるようになるのだろうか?

その答えは3つある。

 

まず一つ目の方法は、さまざまな「典型的パターン」を事前に知っておき、

モノゴトが起きていく状況をパターン認識するということだ。

 

こうした「広がり」の性質を持つルートを、システム思考では「拡張フィード・

バック・ループ」と呼ぶ。

「拡張」には「良い」「悪い」の区別はなく、単純に「その傾向が拡大する」

という意味だ。

 

このように「いったん増えたもの」が「結局は減ってしまう」というような

場合には、このバランス・フィールド・ループが働いていることが多い。

 

✔︎ 複雑なシステムも、このたった2つのループからできている

 

実は、どんなに複雑に見えるシステムでも、拡張フィードバック・ループと

バランス・フィードバック・ループのたった2つだけでできていると考えるのが、

システム思考の考え方である。

 

こうしたことは、どんなことにも当てはまる。

「栄枯衰退」「驕れる平家は久しからず」「永遠の成長などない」というように、

表現が異なるが、モノゴトが永遠に一方向に動くことはないとは、昔から

言われ続けていることだ。

 

モノゴトには「作用」と「反作用(副作用)」という2つの側面があり、

そのどちらが強く出るかで、モノゴトの動き全体が決まると考えておけば

いいだろう。

 

まずは、このような典型パターンを理解し、その枠組みに当てはめて考える

ことでモノゴトの全体像を見ようとすることから始めなくてはならない

(「成功が成功を生む」他にも、2つのループの組み合わせから成る「典型的

パターン」にはいくつかある。

巻末に挙げたシステム思考の推薦図書を読んで、ぜひ学んでほしい。

特にビジネスマンにとっては、一生使える有益な武器になるはずだ)。

 

 

この続きは、次回に。

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