書籍「10年後の自分」を考える技術 ⑩
✔ 異質なもの同士のつながりが、大きな変化を生み出す
「弱い絆の強さ」の大切さは、この章で話をしている「横のつながり」や
「縦のつながり」とも大いに関係がある。
それは、異質なもの同士がつながると、とても大きな成果を生むという点である。
収穫逓増、ロックイン、拡張フィードバック、経路依存症などといった共通点だ。
収穫逓増とは「Winners Take it ALL(勝者のひとり勝ち)」という言葉で
知られており、マイクロソフトのウィンドウズがなぜ「ひとり勝ち」に
なったのかといった事例を説明するのによく使われる。
ロックインは、パソコンのキーボードのQWERTY配列のように、長期に
渡ってモノゴトが「固定化」される様子を示しているし、拡張フィードバックや
経路依存症はすでに説明した通りだ。
つまり、さまざまな分野に見られる「システム」の特徴を「一段高い視点から
全体を見る」思考をすることで解明しようと、著名な研究所たちが集まったのが、
サンタフェ研究所なのである。
✔ 専門バカになるな
今の時代、私たちはこれからどう行動し、どう他人とつながるべきか?
その2つ目のポイントは、「専門バカになってはいけない」ということだ。
「自分たちの分野は特殊で、他の分野の人たちにわかるわけがない」という
スタンスをとった瞬間に、入ってくる情報は狭まってしまう。
グラノヴェターも「強い絆によって構成されるネットワークは類似性や
同質性が高く、強い絆ばかりを重視すると、そのネットワークは孤立する」と
指摘している。
プロ化していく過程で、まわりを見る「周辺視野」が保たれていないと、
どんどん孤立し、将来「使えない人間」になっていくリスクが高まる、
というのが私の意見だ。
今後、「専門バカのプロ」ではなく、そうした「横断的なプロ」が求められる
時代がおとずれるのは、ほぼ確実だろう。
✔ まずは「マインド」からはじめよう
とにかく若い人に強く言いたいのは、なるべく横断的にモノゴトを見る意識を
持ってほしい、ということだ。
技術(スキルやノウハウ)も大事だが、そのまえに必要な意識(マインド)だろう。
専門家の言う「ありえない」とは、自分の経験則で言っているだけであって、
「(今までなかったから今後も)ありえない」ということにすぎない。
プロは確かに専門家ではあるが、それゆえに、そのジャンルの狭い枠組み
でしかモノゴトを見ることができず、変化に対応する力が脆弱になってしまう
危険性をはらんでいるのだ。
「アンダーなバカ」や「オーバーなピエロ」は、まだ良いほうかもしれない。
もっと性質(たち)が悪いのは、「他人の意見に耳を傾けようとしない、
〝困った人たち〟」である。
私はいつも自分のクライアント企業の人たちに「最大の敵は社内にあり」と
言っている。
社内の派閥のことではない。
「われわれの強みは、他社には真似ができない」とか「競合の新製品は
大したものではない」という自己満足や油断という「心の隙」のことを
言っているのだ。
これが蔓延すると、どんな素人でも専門バカになりえる。
✔ 「健全に疑う力」を身につけるためには?
そのためには「強制的に自分とは違う視点を入れる」努力が必要になってくる。
✔ フレームワークとは、強制的に疑うためのツール
これらフレームワークは「広く客観的に考える」ことを強制してくれる
ツールであって、自分の主観だけで考えがちな私たちにとって、とても
重要になるものだ。
たとえば「マーケティングの3C」とは、
● Company(自社)
● Customer(顧客)
● Competitor(競合他社)
「知っているかどうか」ではなく、フレームワークを使って「知らないことに
気づけるかどうか」がポイントになる。
「スキルを身につける」ことではなく、「マインドを持つ」ことだ。
✔ 時代観キーワード
ここまで、「つながり思考力」について、かなりのページを割いて説明してきた。
そして、システムに向き合っているという感覚を養い、「横のつながり」や
「縦のつながり」などを考えたうえで、自分なりの時代感覚を養うことが
必要不可欠だと述べてきた。また、弱い絆を維持し続けるような行動、
異分野と交流することの重要性も説明した。
どうだろう、自分なりの時代観が、少し持てるようになっただろうか?
世界がつながりでできているということを、実感することができるように
なっただろうか?
時代観を持てるようになると、その時代観をもとに、いま起きている
さまざまなモノゴトを解釈し、整理することができるようになる。
そして、「今はどういう時代なのか?」ということが見えてくることで、
「これからどういう時代がおとずれるのか?」という〝未来〟までも、
自分なりに先読みして考えることができるようになるのだ。
その具体的な方法については、次章で詳しく解説していこう。
この続きは、次回に。