書籍「10年後の自分」を考える技術 ⑯
✔ 「どう予測するか?」ではなく「起きたらどうするか?」
シナリオ・プランニングは「未来予測」と混同されがちだが、「予測という
言葉には「正解を当てる」というニュアンスが含まれている。
これだけ不確実性が高い時代に、正解なんてものは誰にもわかりようがない。
未来をピンポイントに予測することは不可能だという考えをアタマに
叩き込んでおく必要があるだろう。
これはいくら声を大にしても言い足りないことだ。
だから本書でもくり返し言っている。
学校でも、こういったベーシックな考え方を教えておくべきだろう。
これまで、多くの未来予測が外れてきた。
希望的観測(主観)をなるべく排除し、不確実性がもたらす「未来の幅」について
考えることが大事であるし、もっと重要なのは、「どう予測するか?」ではなく、
起こりうる可能性のある未来に対して「起きたらどうするか?」を真剣に
考えることだ。
ガイダンスでも少し説明したが、真剣に「たら・れば」を考えることが、
今の時代に必要な思考法なのである。
そして、そういった「たら・れば」を考えることで、ふだん目にする情報や、
その情報に対峙する姿勢も変わってくる。
情報というものは、意識しないかぎりは入ってこない。
そしていざ、そういった未来が現実におとずれたときには、事前に想定
していた分だけ早く、そして綿密に対処することができる。
あらかじめ地元の親を自分の元に呼び寄せて一緒に暮らすなどの方法を
とることも考えられるだろう。
こういった意識・行動を怠った人が言う常套句が「想定外」であり、想定外の
人生を送らないために、そしてもっと積極的にいえば、自分が目指す生き方、
夢見る人生を送るためにも、若いみなさんにはこの思考法をぜひとも習得して
もらいたい。
✔ 自分の「未来の人材価値」を考える
社内、そして業界内における自分の人材価値がどうなっていくかというのは、
会社員であれば誰でもが気になるテーマだろう。
10年後のことを考えてみると、10年後に10歳年齢が上がっているのは確実な
ことだ。いま30歳であれば40歳になっている。
そのとき、はたしてどうなっているか?
何も考えずに上から降ってくる目の前の仕事だけに注力していたら、
10年後にいきなり会社を放り出されることだってありえるだろう。
いま必要とされるスキルが10年後も変わらず必要とされているとは
かぎらないのだ。
専門家(エキスパート)とは聞こえの良い言葉だが、その分野そのものに
価値がなくなってしまえば、いくら専門家になったところで生き残ることは
できない。
いまや、弁護士のような高度な専門家であっても、その資格だけで就職が楽とか
一生安泰という時代ではないのだ。
だから、今の若い人に言いたいのは、常に会社や業界、そして日本経済の
先行きを視野に入れたうえで、一個人としてできることを地道に行っていくと
いうことだ。
とはいえそれは、今の仕事を今の8割くらいの労力と時間でできるように
個別のスキルを高めるか、平日は今の仕事に集中し、週末の1日を「未来に
投資する=どんなシナリオが来ても大丈夫なスキルや思考能力、教養を
獲得する」ことに傾けるかのいずれかだろう。
そして、たぶん今後は、「どちらか(or)」ではなく、「両方(and)」が
求められる時代になっていく。
日々の忙しさにかまけて、未来のことに時間が使えていないのであれば、
一度立ち止まって「未来のたら・れば」を考えることを強くすすめたい。
この続きは、次回に。