書籍「10年後の自分」を考える技術 ⑰
✔ どうすれば「真剣に」なれるのか?
とはいえ、未来のことはやはり遠い先のことでもあるので、
「そうだな、未来について考えるのは本当に大切なことだ。
でもまあ、考えるのは明日にしよう」となりがちだ。
つまり、なかなか「真剣に」はなれないのである。
では、どうすれば「真剣」になれるのか?
ポイントは、いかに目の前で起きているかのように体験するか、だ。
人間は記憶に基づいて意思決定をすると言われている。
そして、記憶とは一般的に過去のものであり、意思決定に大きな影響を
与えるのは過去の成功体験や失敗体験である。
シナリオ・プランニングにおいては、「もし○○が起きたらどうなるか?」を
想像力を働かせて考え、「仮想体験」する。
仮想体験などと言うとSFっぽく聞こえるかもしれないが、要は空想の
絵空事レベルで終わらすのではなく、なるべくリアルに考えてみようと
いうことだ。
未来の「幅」をリアルに考えるためには、いろいろと情報を集めることが
必要だし、ノートに書いて考えたり、他人と議論をする必要も出てくるだろう。
「手と足」を動かして考えることで、絵空事レベルではない〝リアルな
未来〟を考えられるようになるはずだ。
このときのポイントは、なるべく「具体的に」考えてみることだ。
特に、よく言われる「5W1H」(誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように)の
視点を必ず入れて考えてみてほしい。
最近は、2H(「どのように」に加えて、「いくら」を意味するHow much?)とも
言われるので、「どのくらいのお金」という視点も抜かさないようにしよう。
✔ 思考をジャンプさせる
より質の高い仮想体験をするためには、「思考のジャンプ」といったものが
必須となる。
そこからもう一歩進んで、「こんなことはありえない」「考える必要はない」と
思われるものについても、一度ちゃんと考えておく必要がある。
それが、思考のジャンプだ。
むしろ、「そんなことはありえない」「考える必要なんてない」などと
思ってしまう心理的な壁が大きい。
このような「自分をとりまく未来環境」について、一度「思考をジャンプさせて」
考えてみてほしいのだ。
おそらく、何が起きても「想定外だ」「信じられない」「ありえない」
「予想もしなかった」といったセリフは吐かない人間になっているだろう。
✔ ダメな人、ダメな組織の特徴
過去の自分の思考パターンや典型的な発想から思考をジャンプさせて、
普段なら絶対に考えないようなことを考えるためには、歴史や経験から
学ぶことも大いに役立つ。
ある程度、客観的に考えられるということは、「失敗を起こした人を
責めるのではなく、その背景にあるシステムを改める良い機会だと
思える力がある」ということと同じ意味だ。
しかし、普段から主観的にしか思考できない人や組織は、失敗を認めようとせず、
結果として何も学ぶことができない。
認めてしまうと、その人や組織自身を否定せざるをえなくなるからだ。
そんな社会で生きていると、希望的観測の入った「一本道の予測」の罠から
抜け出すことはできないだろう。
個人にとっても同じことで、何か失敗したら、「何がいけなかったのか」
「自分の弱点は何か」「つぎに活かせるものは何か」などと考える客観性が
必要なのである。
そして、こうした客観的思考法は後天的に鍛えることができるはずというのが、
私の主張である。
この続きは、次回に。