書籍「10年後の自分」を考える技術 ㉒
✔ 「共通してやるべきこと」は何か?
さて、こうして4つのシナリオを総合的に見ていくと、いま現在、10年後の
ためにやらなければならない「行動」や「意識」が見えてくる。
それは、どのシナリオになろうとも、今から着々と準備を進めるべきでもある。
● プロフェッショナルとしての自己の確立
● ITリテラシーの向上
● 家族ケアプランニング(親の面倒を見る方針を決める、子育てについて
夫婦で話し合う、など)
● 国際的に働ける語学力の獲得
これから、経済的にさらに変化の烈しい時代がおとずれることを考えると、
右上と右下のシナリオは、かなり現実的な未来だとも言える。
こうやってシナリオを使って「強制的に」未来のことを考えていくことで、
「普段の自分の発想・思考からは出てこない未来」について、客観的に
考えられるようになるのである。
それが「Think Unthinkable」の発想だ。
✔ ②と③の不確実性を組み合わせると?
※ 図に対する説明の為、省略致します。
✔︎ 未来ストーリーを過去形で語る
※ 省略致します。
こうした「シナリオ」を複数つくるのが、シナリオ・プランニングだ。
ここで大事なのは、変化ドライバーを列挙して終わるのではなく、必ず
「ストーリー」にまですることだ。
もし、どのシナリオも「ロジックが通っていてありえそう」ということで
あれば、それぞれのシナリオの意味することを考え、何を準備しておくべきかを
考える。
不確実性が激増した今、こうした取り組みを行う企業が増えてきている。
本書では、そうした準備を個人レベルでもやってみる必要性と意味が
あるのではないか、というつもりで説明してきた。
その必要性と意味を少しでも感じてくれたのであれば、ありがたい。
✔ 先読みが「針路」を決める
シナリオという「未来物語」は、書けばそれで終わり、というものではない。
そのままにしておけば、本当に夢物語に終わってしまう。
大事なことは、それを「今」に引き戻して、「今日何をすべきか」の現実物語に
翻訳することだ。
つまり、「行動する」ということである。
※ 省略致します。
ひとつ目は、ある企業の事例だ。
※ 省略致します。
二つ目は、シナリオで人生を変えた人たちについてだ。
私はこれまでに、主に企業で働く2000人を超える人たちに、シナリオ作りに
ついて直接指導を行い、一緒にシナリオをつくってきた。
そのなかには、シナリオのストーリーづくりを体験したことで、自分の
キャリアを考え直し、勤務先の企業を辞め、自分で起業した人たちが何人か
いる。
「複数の未来」を仮想体験するなかで、自分が「世の中を誘導したい」と
感じたシナリオは、現在のキャリアのままではいつまで経っても実現
できないと感じたそうだ。
そこで、勤務先の企業がそのシナリオを信じず、実現に本気を出さない
のであれば、自分でその世界を作り上げようと考えたのである。
仮想とはいえ「体験」が針路まで決めてしまうことに、こちらの気も締まる
思いだが、その人たちは自分が「見て体験した世界」を信じて、その夢の実現に
向けて行動している。
この章では、「つながり思考力」を発展させた「先読み力」について話をしてきた。
未来物語としてシナリオをつくるというのは、ちょっと遊びのような感じが
するかもしれない。
しかし、遊びだろうとなんだろうと、一度記憶の片隅においた「経験」は、
確実に意思決定に影響を与えるはずだ。
この〝既視感-デジャブ〟があるかないかは、意外に大きい。
「この話って、以前どこかでやったな」と思い出すだけでも、意思決定は
ずいぶんと変わってくる。
シナリオづくりは遊びだ、とバカにして終わるのではなく、ぜひ一度
「未来の仮想体験づくり」にトライしてみてほしい。
そして、未来に向けて最初の一歩を踏み出してほしいのだ。
この続きは、次回に。