衛生管理 食中毒
新型コロナウイルスの影響で、自宅でずーっと外出自粛をしております。
接角のあまりある時間ですので、書籍を数冊購入致しました。
その内の一冊-ユーキャン の食生活アドバイザー検定2級 第3版
速習テキスト&予想模擬の中から、「4章 衛生管理 Lesson 1 食中毒とは」の一部を
ご紹介したいと思います。
是非、購入していただき、参考にしてみてはいかがでしょうか?
少しでも、お役に立てれば幸いです。
Lesson1. 食中毒とは
1. 食中毒の症状と原因物質
● 食中毒の原因物質は、細菌、自然毒、ウイルス、化学物質、その他に
分類できる。
● 食中毒は、原因物質が包装容器や調理器具、食器などに付着していたことに
よって発生する場合もあります。
● 栄養障害
栄養素の摂取量の不足や過剰が原因で起こる状態は、「栄養障害」であり、
食中毒とは異なる。
(1) 食中毒とその症状
飲食物に含まれている有害な物質を摂取することなどによって発症する
健康障害を「食中毒」といいます。
一般には、嘔吐・腹痛・下痢などの急性の「胃腸障害」を引き起こしますが、
頬や目の下がピクピクする、力が入らない、声が出ないといった「神経系の
症状」がでる場合もあります。
(2) 食中毒の原因物質
食中毒は、その原因物質によって「細菌性食中毒」、「自然毒食中毒」、
「ウイルス性食中毒」、「化学物質による食中毒」、「その他のもの」に
分類されます。
I.細菌性食中毒
細菌性食中毒は、「感染型」と「毒素型」に分類されます。
病原菌が増殖する条件は、温度(種類によるが、最も増殖しやすいのは
30〜40℃)、
湿度(水分が多いほど増殖しやすい)、栄養素(たんぱく質、糖質、ビタミンなど)が
必要です。
■ 細菌性食中毒の種類
✔ 感染型
食品内である程度増殖した原因菌が食品とともに体内に取り込まれ、腸管内で
さらに増殖して症状を引き起こすもの。
例) 腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモレラ属菌など。
✔ 毒素型
● 食品内毒素型
食品内で原因菌が増殖し、そこで産生した毒素が原因物質となるもの。
例) 黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、セレウス菌(嘔吐型)など。
● 生体内毒素型
体内に取り込まれた菌が腸管内で増殖し、産生した毒素が原因物質となるもの。
例) 腸管出血性大腸菌、ウエルシュ菌、セレウス菌(下痢型)など。
● 細菌とウイルス
細菌は自らが細胞であり、分裂によって増殖する。
一方、ウイルスは遺伝子だけの小さな粒子であり、他の生物に感染して、
その細胞中のたんぱく質合成やエネルギーを利用して初めて増殖できる。
● バクテリア
一般には細菌類のことを指す。もとは「微小なもの(原核生物)」という意味。
II 自然毒食中毒
「動物性自然毒」と「植物性自然毒」に分けられます。
■ 主な自然毒とその毒素名
✔ 動物性
主なもの→フグ(フグ毒) テトロドトキシン
二枚貝(貝毒) サキシトキシン
巻貝(貝毒) テトラミン
✔ 植物性
主なもの→トリカブト アコニチン
毒キノコ アマトキシン、ムスカリン
じゃがいもの芽 ソラニン
青梅 アミグダリン
● きのこは植物ではなく菌類ですが、一般には植物の仲間と思われているため、
食中毒統計では植物として扱われています。
Ⅲ ウイルス性食中毒
ウイルス性食中毒では「ノロウイルス」が代表的ですが、A型肝炎や
E型肝炎などのウイルス性肝炎もあります。
Ⅳ 科学物質性食中毒
洗剤や漂白剤、農薬(殺虫剤、除草剤)の誤飲・誤用、有害金属(水銀、ヒ素など)や
シアン化合物による食品汚染などがあります。
Ⅴ その他の食中毒
寄生虫のほか、カビ毒(マイコトキシンともいう)があります。カビ毒の
一種であるアフラトキシンは、アーモンド、とうもろこし、ピスタチオ、
香辛料などから汚染事例が報告されており、高い発ガン性があるといわれています。
● 寄生虫
たとえば、回虫の一種であるアニサキスは、イカ・アジ・サバ等の生食に
よって感染し、急激な腹痛を起こすことがある。
2. 主な細菌性食中毒、ウイルス性食中毒
腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ属菌は、感染型の細菌性食中毒である。
(1) 腸炎ビブリオ(細菌:感染型)
海の魚介類を介して食中毒を引き起こすため、かつて日本人が魚を多く
摂取していたころには発生件数の第1位でしたが、近年は減少傾向にあります。
特徴:塩分を好み、海水程度の濃度3%前後でよく増殖する。夏〜秋に多発。
他の細菌と比べて増殖速度が速いが、真水や熱に弱い。
潜伏期間:10〜18時間。
主な症状:腹痛、水用下痢、発熱、嘔吐
原因食品:魚介類(刺し身、寿司、魚介加工品)のほか、二次感染による各種食品(塩辛など)
予防法:魚介類は新鮮なものでも真水でよく洗う。短時間でも冷蔵庫に保存し、
増殖を迎える。60℃、10分間の加熱で死滅する。
● 潜伏期間
病原菌に感染してから身体に症状が現れるまでの時間。
● 二次感染
細菌やウイルスが、調理器具(包丁、まな板など)や人間の手を介して、
ある食品(肉、魚など)から別の食品(野菜など)へ移行すること。
(2) カンピロバクター(細菌:感染型)
ここ数年、日本で最も発生件数の多い食中毒です。また、患者数が1名の事例が
多いことも特徴です。
特徴:家禽(鶏)や家畜(牛・豚)の腸管内に生息して、食肉を汚染する。乾燥に
極めて弱く、また、通常の加熱調理で死滅する。
潜伏期間:48〜168時間(2〜7日)
主な症状:腹痛、下痢、発熱など。倦怠感や頭痛などが起こることもあり、
風邪と間違いやすい。
原因食品:食肉、飲料水、生野菜など。近年は、食肉(特に鶏肉)によるものが
増加傾向にある。
予防法:調理器具を熱湯消毒し、よく乾燥させる。肉と他の食品との接触を避ける。
食肉に十分な加熱をする。飲料水は煮沸する。
● カンピロバクターには少量の酸素という特殊な条件下で増殖する特徴があります。
また、菌数が少量でも食中毒を発症します。
(3) サルモネラ属菌(細菌:感染型)
人や動物の消化管に生息する腸内細菌であり、家庭で飼われるペットから
検出されることもあります。
特徴:動物の腸管、自然界(河川、下水など)に広く分布。鶏卵は殻から中身まで汚染。
潜伏期間:8〜48時間。
主な症状:激しい腹痛、下痢、発熱、嘔吐、脱力感。
原因食品:鶏卵、食肉(牛レバー刺し、鶏肉)など。
予防法:肉・卵は十分加熱する(75℃で1分以上で死滅)
● 卵の生食は新鮮なものに限ります。家庭の手作りケーキや手作りマヨネーズなどから、
サルモネラ属菌の食中毒が発生した事例もあります。
(4) 黄色ブドウ球菌(細菌:食品内毒素型)
菌自体は熱に弱いのですが、増殖する時に産生する毒素(エンテロトキシン)には
耐熱性があり、多少の加熱では無毒化されません。
特徴:人や動物の化膿創、鼻咽頭などに分布する。化膿菌ともよばれる。
潜伏期間:1〜3時間。
主な症状:吐き気、嘔吐、腹痛、下痢
原因食品:おにぎり、サンドイッチ、弁当、生菓子
予防法:手指に洗浄消毒する。傷や化膿創があるときに、食品に直接触れないようにする。
● MRSA
黄色ブドウ球菌の一種で、「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌」の略。
抗生物質に対して耐性を持っているため病院などで集団感染しやすい。
(5) ボツリヌス菌(細菌:食品内毒素型)
食品内で産生するボツリヌス毒素によって食中毒になります。
致死率が高いことで知られています。
特徴:土壌中、河川、動物の腸管など、自然界に広く生息。酸素のないところで
増殖する。
潜伏期間:12〜36時間
主な症状:嘔吐、頭痛、手足の痛み、視覚障害、呼吸困難。
原因食品:ソーセージ、ハム、肉類の缶詰、いずしなど。
予防法:十分に加熱して調理し、保存は低音で行う。
● ボツリヌス菌食中毒の原因食品
日本では「いずし(魚にご飯を一緒に漬けこみ、発酵させたもの)」による発生が
多いので注意する。
(6) セレウス菌(細菌:食品内および生体内毒素型)
嘔吐型と下痢型に分けられます。芽胞話形成するため、加熱や乾燥に
強い抵抗性を示します。
特徴:土壌、水中、ほこりなど自然界に広く生息。
潜伏期間:下痢型:8〜16時間、嘔吐型:1〜5時間。
主な症状:嘔吐型:チャーハン、ピラフ、スパゲティなど。
下痢型:食肉、スーブ、ソース、プリンなど。
予防法:米飯や麺類を作り置きせず、調理した後、速やかに食べる。
● 芽胞
特定の菌が作る細胞構造の一種。生息環境が増殖に適さなくなると菌体内に形成され、
発育に適した環境になると本来の細胞となって再び増殖する。
(7) 腸管出血性大腸菌(細菌:生体内毒素型)
ベロ毒素を産生する大腸菌による食中毒で、原因となっている種類は
O157がほとんどです。
特徴:動物の腸管内に生息し、糞尿を介して食品や飲料水を汚染する(飛沫感染は
しない)
潜伏期間:24〜216時間(1〜9日)
主な症状:腹痛と大量の新鮮血を伴う血便、尿毒症、意識障害。短期間で死に
至る場合もある。
原因食品:井戸水、焼肉、牛レバーなど。
予防法:加熱(75℃で1分以上)や消毒薬により死滅する。通常の食中毒対策を
確実に実施することで十分に予防可能といえる。
● O157の意味
大腸菌はO抗原(細胞壁由来)とH抗原(べん毛由来)により細かく分類されており、
O157は O抗原として157番目に発見されたものという意味。
(8) ウエルシュ菌(細菌:生体内毒素型)
食物とともに腸管に達すると増殖して毒素をつくります。学校給食などでの
集団感染がみられます。
特徴:人や動物の腸管や土壌、下水に広く生息。芽胞は100℃で1〜3時間の
加熱に耐える。
潜伏期間:8〜20時間。
主な症状:下痢、腹痛。
原因食品:肉・魚・野菜を使用した煮物、カレーなど。
予防法:清潔な調理を行い、調理後速やかに食べる。
● 食品を加熱調理してもウエルシュ菌の耐熱性芽胞は生き残り、食品の温度が
発育に適した温度まで下がると発芽し急速に増殖します。
このため大量の食品を加工する施設での発生が多くみられます。
(9) ノロウイルス(ウイルス)
冬季を中心に、年間を通じての発生が確認されています。
食品を介さない空気汚染も報告されています。
特徴:食品取扱者を介した二次汚染が多く、近年感染事例が増加傾向にある。
潜伏期間:24〜48時間。
主な症状:下痢、嘔吐、吐き気、腹痛、微熱。
原因食品:カキ等の二枚貝、二次汚染された食品。
予防法:食材を中心部まで加熱(85〜90℃以上で90秒以上)。手指の洗浄、
調理器具の熱湯消毒。
□ キーポイント
食中毒の症状と原因物質
1. 食中毒の原因物質は細菌、ウイルス、自然毒、化学物質などに分類できる。
2. 感染型と毒素型はウイルス性食中毒ではなく、細菌性食中毒の分類である。
3. テトロドトキシンは、フグに含まれる毒素である。
主な食中毒
4. カンピロバクターは食肉が主な原因食品とされている。
5. 黄色ブドウ球菌は毒素型であるが、サルモレラ属菌は感染型である。
6. O157や腸炎ビブリオ、サルモネラ菌は、加熱によって死滅する。
● SRSV
「小型球形ウイルス」の略。
ノロウイルスの旧名であり、2003(平成15)年から「ノロウイルス」へと名称が変わった。
株式会社シニアイノベーション
代表取締役 齊藤 弘美