危機の時代 ジム・ロジャーズ ㉑
・クォンタム・ファンドを立ち上げる
その頃に出会ったのがジョージ・ソロスだ。
当時、私は仕事を探しており、知人から彼を紹介してもらった。
彼は若いアナリストを探していた。
彼は、私の能力と人柄を評価してくれ、採用が決まった。
その職場は、仕事をするのに大変魅力的な場所だった。
本当に、とても楽しかった。
それはまさに私がやりたかったことで、多くの楽しみがあり、いくつかの
成功を収めた。
その後、共同で立ち上げたクォンタム・ファンドは10年で4200%と言う
驚異的なリターンを叩き出した。
クォンタム・ファンドは多くの利益を得ることができ、私の懐も潤った。
しかし、私は1つのことにしばられず、常に複数の人生を経験したいと
ずっと思っていた。小さな田舎町で育つと、「ここにはずっといたくない、
広い世界を見たい」と思うようになるものだ。
私はいつも人生において、さまざまな経験をしたいと強く願っていた。
だから私は1980年に、37歳で引退した。
・経営学より、歴史や哲学の方が人生に役立つ
投資に役立つのはビジネススクールで学ぶことではなく、むしろ歴史や哲学だ。
私がウォール街で働いていた時に大事にしたのは、世界がどのように
機能しているのかを知ることだった。
歴史は物事が常に変化していることを教えてくれる。
英国の栄枯盛衰や、連合国とドイツの戦争などの事象と、その時、世界が
どのように機能したかを知っていると、どう行動すればいいのかヒントになる。
私は政治と経済学だけ勉強したかったが、哲学も勉強する必要があった。
私は望んでいなかったが、哲学を学んでいたことは、その後の人生で非常に
役立った。
歴史も哲学も勉強していた当時は全く気づかなかったが、後の人生に意味が
あった。それらは今考えるとすべて有用でとても役立っている。
哲学を学んでいた際に、奇妙な質問をした人を覚えている。
「太陽が東から昇ることを、なぜあなたは知っているのか」。
太陽が東から昇るのは誰もが知っていて当たり前だ。
だからこの質問を聞いた際には、私は「この男はなんてばかなのか」と
思った。
しかし私は間違っていた。こうした物事の根源的、本質的な部分を熟考し、
理解し、その理由を知ることは大事だ。
その重要性を多くの人は理解していない。
もちろん哲学を勉強するだけでは十分ではない。
あなたは人生において、自分自身や世界について、考え続けなければならない。
そのようにして生き方を考えるうえで、哲学は便利な学問だ。
私は、哲学者とは時間をすべて無駄にする愚かな人間だと思っていたが、
それは完全な間違いだった。
物事の本質とは何かを考えることほど大事なことはない。
・人生における最大の危機
私にとって最大の危機とは何だったのか。
私は投資家としてのキャリアをスタートした非常に速い段階で、すべてを
失ったことがある。それが危機であったかどうかは、当時の私はそもそも
お金がなかったのでよくわからない。
それは1億ドル(約110億円)を失うような大損失ではなかったが、当時の
私にとっては打撃が大きかった。私はすべてを失った。
それは不愉快な経験だった。私はいったん大成功を収め、巨大な勝利を手にした。
5カ月でお金を3倍に増やした。当時、私の周囲の多くの人が破産してすべてを
失ったり、自殺したりしていた。企業も次々に姿を消していた。
そんな時にお金を3倍に増やすことができたのだ。
しかし、その2カ月後、私はすべてを失った。
そのどん底の経験から私は多くを学び、復活した。
自分ではそれまで頭が良いと思っていたが、私は全くと言っていいほど
頭が良くないという現実に気づいた。
その教訓は私の人生にとって非常に役立つものだった。
次の危機が来たらどうすべきかという多くの教訓が得られた。
つまり、危機を克服する方法、生き残る方法、勝つ方法を学んだ。
忍耐することを学ばなければならない。
忍耐は、私が子供たちに教えようとしている最も重要な言葉である。
忍耐し、あきらめない。
もしあなたが成功したいならあきらめずに、前進を続けるべきだ。
この続きは、次回に。